Ⅵ 研究の質の向上と改善のためのシステム

1.現状の点検と評価

 研究の質を向上させる自己点検・評価システムとして、本学では、平成11年までは、平成4年から開始した5年ごとの大学運営、教育、研究、診療の4分野を纏めた自己点検・評価とともに、同じく平成4年より開始した毎年出版する研究業績目録の公表であった。このうち、研究面の自己評価書でもある研究業績目録では、過去1年間の間に出版した原著、総説、著書などを纏めて記載することにより、他大学の同分野の講座との比較や、同じ大学内の他講座との比較を容易にすることにより、反省や切磋琢磨するための材料を与えることが大きな目的であった。しかし、この中には論文の質を評価する一つのパラメーターであるインパクトファクターや、講座の研究活動の活性度となる年間、研究者1人当たりの論分数などは記載されず、これらの評価は基本的には各講座等に任され、大学全体として研究の質や活性度の評価は、文部省科学研究費の取得状況あるいは学術賞の授与の状況などを把握するのみであったと言わざるを得ない。

 第一項でも述べたように、本学では平成12年になって初めて「研究の目的及び目標」を設定した。これを受け、これまで研究評価を含め、5年毎に行っていた自己点検・評価体制の見直しを行い、従来の自己点検・評価委員会を発展的に廃止し、新たに4つの評価委員会、すなはち、研究評価委員会、教育評価委員会、医療評価委員会、大学運営等評価委員会を設置した。このうち、研究評価委員会は、本学の研究目的と目標あるいは研究組織、そして研究内容とその水準に関する自己点検・評価を行い、改善策を検討することを目的としている。

 この委員会では、発足後、直ちに教員の研究活動の評価システムとして研究業績評価の基準を検討することになっていたが、同時に本学に立ち上げた予算配分協議会の研究評価部会において、毎年度行う個々の教官の研究業績評価基準(資料17参照)が定められ、今日に至っている。いずれにせよ、研究目的及び目標の妥当性、研究活動状況や問題点の把握、教員個々の研究活動の評価・改善システムは立ちあがったばかりで、意識の向上は見られるがその機能についての評価は未だである。

 研究活動の面で学外者の意見を反映させるシステムとしては、これまで大学の参与会が(平成13年度からは大学運営諮問会議)唯一のものであったが、この会議の構成員は必ずしも研究の専門家ではなかった。学外の専門家による評価は、これまで平成4年にイギリスのGMC(General Medical Council)への登録申請による実地調査、平成5年の文部省医学視察員の実地調査、平成6年の厚生省による特定機能病院承認申請による実地調査が行なわれたが、これらは定期的な外部評価ではなかった。今後は、大学評価・学位授与機構による研究評価が行われることが決定されているが、今回から自己点検・評価の際にも専門家による外部評価を依頼し、専門家からの多くの意見を本学の研究活動の改善に役立てることにした。