News 2020

 ◆ 石井 優 先生(大阪大学大学院)セミナー

2020年3月16日

 
  大阪大学大学院医学系研究科免疫学フロンティア研究センターの石井優教授をお迎えして、感染予防医学講座でセミナーを開催しました。本来、通常の大学院セミナーとして開催する予定でしたが、COVID-19の感染拡大を憂慮して、急遽講座のClosed Seminarとして開催しました。石井先生は、2光子励起顕微鏡を用いた生体イメージングで数々の業績を挙げられています。特に、免疫細胞、骨細胞(破骨細胞)の生きたままの姿をとらえることで、これら細胞の新たな制御機構を解明されています。今回も最新の映像を拝見することができました。これを感染予防医学講座のメンバーしか見れなかったのは本当に残念でした。夜は、大分の旨いもんを囲んで情報交換。石井先生、大変な時にわざわざお越しいただきありがとうございました。

 〜 生体多光子励起イメージングによる 免疫・炎症ダイナミクスの解明 〜
 生命システムでは「動き」が重要である。多種多様な細胞の動態は時空間的に精緻にコントロールされている。このようなシステムの研究には、従来の組織学的解析法では不十分であった。固定・薄切した組織観察では、細胞の「形態」や「分子発現」などを解析することはできるが、細胞の「動き」を解析することはできない。細胞の動きを見るためには、「生きた細胞」を、「生きた組織」「生きた個体」の中で観察する必要がある。本演者は深部組織の観察に適した多光子励起顕微鏡を駆使して、生きた細胞の生きたままの動きのある世界を捉えることを可能にしてきた。本講演では、演者がこれまで行ってきた骨髄や免疫組織の生体イメージング研究を中心に紹介し、見ることによって初めて分かった様々な免疫細胞の巧妙な動きとその制御機構について解説する。破骨細胞は炎症によって活性化して骨を破壊・吸収するマクロファージであるが、骨髄内の血管から出入りしながら「壊すべき場所」を探していた。また、破骨細胞と骨芽細胞は直接接触して情報を伝達していた。これら細胞の生きた動きの制御機構は、時間軸をもって生命現象を捉えることが可能な、生体イメージング技術があったからこそ得られた新知見である。