「政府が新型肺炎患者数を過少公表」中国の軍医が告発

【北京=浜本良一】北京の人民解放軍総医院(301病院)に勤務する蒋彦永医師
(72)は9日までに、中国政府が新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)
の感染者数や死者数を過少に偽って公表している疑いがあるとする内部告発文書を
内外報道機関に送った。

同医師の告発によると、同市内にある軍第309病院だけでも60人の患者を治療
中で、5日までに7人が死亡した。入院病棟はすでに満員で、別の病院に患者を搬
送しているという。さらに、人民武装警察系統の病院にも数十人の感染患者が収容
されているとしている。

今月3日に記者会見した張文康・中国衛生相は、同市内での感染者は12人で
うち3人が死亡した、と発表。「SARSの感染拡大はすでに抑え込んだ」と強気
の発言をしていた。

蒋医師は「張衛生相の発表を聞き、私はとても信じられなかったし、同僚の医師や
看護師もでたらめだと非常に怒っていた」としている。

301医院では、3月上旬に、重症患者の老人男性1人が入院。SARSの疑いで
伝染病専門病院に移されたが、治療最中に医師や看護師約10人に伝染した。

このころ衛生省は市内の各病院長を招集して緊急会議を開催、SARSの発生を確
認する一方で、「全国人民代表大会(全人代=国会)開催中であり、社会の安定を
保つため、口外してはならない」とかん口令を敷いたという。

(2003/4/9/23:10 読売新聞WEB版)