新型肺炎対策、マレーシアが中国人観光客らにビザ停止

【シンガポール=中津幸久】各国が新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)
対策に追われる中、マレーシアは今月9日、中国人観光客らに対するビザ発給を
停止するなど、感染地域からの入国を締め出す強硬策に踏み切った。これに対し、
中国は、団体観光客がマレーシアなど東南アジア3か国を訪問することを禁止する
措置を打ち出したことから、地域の観光産業を直撃する事態になっている。
マレーシアが入国を制限したのは中国、香港、台湾、ベトナム、カナダの各住民。
ビザ発給停止のほか、非感染を証明する医師の健康診断書の提出を義務付けるなど、
これら地域からの入国を事実上封じた。

中国政府はこの2日後、マレーシア、シンガポール、タイへの団体観光客渡航禁止の
決定を発表。新華社電は「一部の国が中国人観光客へのビザ発給を停止した結果、
不便をもたらしている」と、マレーシアに対する報復であることを露骨ににおわせた。

中国の対応は、周辺国を慌てさせた。昨年、シンガポールを訪れた中国人観光客は
67万人で、対前年比35%の大幅増。特に、来月1日からの中国の大型連休中の
訪問客に期待が寄せられていただけに、観光業界を中心にマレーシアの出方を
疑問視する声が高まっていた。

内外の圧力を前に、マレーシア政府は17日、制限の一部緩和を発表。台湾、香港、
カナダからは従来通りの入国を認めるとした。ただ、中国、ベトナムに対しては
「出国時の検査の強化を求める必要がある」として健康診断書の提出義務など制限を残した。

(2003/4/19/00:14 読売新聞WEB版)