新型肺炎の影響で出稼ぎ者の北京脱出相次ぐ

【北京=浜本良一】新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SAR
S)が広がる中国北京市(人口1300万人)では26日、
「民工」と言われる地方からの出稼ぎ農民たちの北京脱出が続
き、北京駅と西駅の市内の両駅では終日、荷物を抱えた旅行客
でごった返した。

北京市当局はSARSが地方に拡散することを防ぐため300
万人と言われる「民工」が北京から離れないよう通達を出した
が、切符の販売規制などの動きは見られず、今後、SARSの
感染が内陸部に拡大する恐れも出ている。

初夏のような日差しの北京駅前広場。「非典(型肺炎=SAR
Sの意)が怖くなったので仕事を辞め、河北省承徳の故郷に帰
るつもりだが、満席で切符が買えない。北京が封鎖されるとの
ウワサもあり、一刻も早く帰りたい」と家政婦の女性(21)
は立ち席用切符を購入していた。小5の娘を連れたマスク姿の
30代の夫妻は「子供の学校も臨時休校だし、建設現場の仕事
もなくなり、故郷の安徽省に一時避難だ」と切符を手に改札口
に消えた。

駅の赤帽によれば、北京脱出は数日前から始まり、26日は普
段の週末に比べて圧倒的に「民工」の姿が多いという。

一方、市内の目抜き通りは普段の週末の2ー3割の交通量で、
大型スーパーや商店街はどこも閑古鳥が鳴く寂しさ。臨時休業
の飲食店も目立つ。多くの市民は、今週半ばに買いだめに走り、
週末は自宅から出ないようにしているようだ。

北京では、SARS治療指定の地壇病院など3病院が院内感染
のために封鎖され、北方交通大学と中央財経大学でも患者発生
のため学生寮の消毒作業が進められている。感染者と接触した
と見られる市民約4000人が自宅内に隔離され、外出を禁じ
られている。SARsによる死者の場合、遺族は葬儀をしては
ならないとの通達も出た。

26日の衛生省の発表によると、中国全土のSARS感染者数
(同日午前10時現在)は2753人、うち死者は122人。
前回発表の24日午後8時から感染者は154人、死者は7人
それぞれ増えた。北京市の感染者は113人増えて988人、
死者は6人増えて48となった。

(2003/4/26/20:44 読売新聞WEB版)