海外修学旅行、中・高111校見合わせ…新型肺炎余波

中国などを中心とした新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)
の流行余波で、海外への修学旅行を中止して、行き先を国内に変更し
た中学・高校が4月末で、111校に上っていることが、読売新聞社
の調べでわかった。

いずれも生徒の健康や安全を最優先した対応で、今後も追随する
学校が増えそうだ。

読売新聞社が全国の都道府県教委などに取材したところ、海外への修
学旅行見直しの動きは24府県に広がり、地域別では広島(22校)、
岡山(16校)、新潟(13校)などが目立った。

長野県大桑村の村立大桑中学校は、3年生の修学旅行の目的地を上海
など中国3都市から国内に変更した。もともと県内の公立中では初の
海外修学旅行として2年生時の昨年春に実施する予定だったが、一昨
年9月の米同時テロがあり、1年延期。今年の春休み中も教師たちが、
イラク戦争などの情報収集に努めながら実施の可能性を探っていたが、
SARSに追い打ちをかけられた格好だ。

大桑中の高柳元茂教頭は「生徒同士が手紙のやり取りをするなど、
1年前から現地の中学校と交流してきただけに残念」と話す。

千葉県教委は先月18日、県内の県立高校に対し、「SARSの感染
者が出た地域への旅行を認めない」と通知した。このため、県立高6
校が、今秋予定していたシンガポールなどへの修学旅行を中止する方針。

修学旅行の行き先は、校長の判断に委ねられるケースが多いが、千葉
県教委は「生徒の安全を考えれば、校長判断ではなく、教委からの積
極的な指導が必要だ」と強調している。

修学旅行の実態調査をしている財団法人「日本修学旅行協会」によると、 海外に修学旅行をするのは高校が多く、昨年度は約17万人の高校生が
海を渡った。うち約10万人は、韓国や中国などアジア地域という。

協会では「3、4泊で10万円前後で行けるのがアジア人気の理由。
実施時期は2学期が多いため、今後、見合わせや行き先変更の動きは
さらに広がるのではないか」と懸念している。

(2003/5/5/03:04 読売新聞WEB版)