中国の新型肺炎、内陸の農村部へ拡大傾向

【北京=竹腰雅彦】中国での新型肺炎(重症急性呼吸器症候群
=SARS)感染地域が、北京市や広東省など沿海都市部から
農村部へ、内陸へと拡大しつつある。

医療体制が未整備な農村部にSARSが侵入すれば爆発的流行
を招きかねず、事態を重視した世界保健機関(WHO)は8日、
河北省に専門家チームを派遣し、北京からの感染拡大の実態調
査に初めて乗り出す。

中国衛生省の発表によると、6日までに、全国31省・市・自
治区のうち、24省・市・自治区で感染者が確認されている。
また、北京市当局は同日、同市郊外で9人の農民の感染者が出
たことを初めて明らかにした。

農村への感染経路の一つとして、出稼ぎ農民の帰郷が指摘され
ている。

北京市当局は、こうした農民らに市から出ないよう呼び掛けて
いるが、同市流動人口約380万人のうち、感染を恐れ、ひそ
かに故郷に帰る出稼ぎ農民は後を絶たない。

中国紙によると西部の寧夏回族自治区だけで最近までに約1万
1000人が帰郷した。故郷で感染が確認され、隔離されるケ
ースも相次いでいる。

こうした事態を受けて、温家宝首相は6日、農村部のSARS
対策会議で、都市部への出稼ぎ農民も含め、農民のSARS感
染者の医療費を無料にするとの方針を表明した。所得の低い農
民が、SARSに感染しても病院に行かない事態を恐れての措置だ。

また、大多数の農村には、SARSに対応できる伝染病病院、
隔離病棟がない。専門医もいない。

中国誌「財経」最新号によると、1000人当たり病床数は、
北京の6・28床に対し、内陸で最もSARS感染者が多い山
西省は3・23床。

医師は北京4・62人に対し、山西2・69人だ。安徽省では
1000人当たりのベッド数は1・83床、医師数は1・13
人にすぎない。

(2003/5/8/00:17 読売新聞WEB版)