新型肺炎医師で台湾衛生署長「日本国民におわび」

【ジュネーブ=大内佐紀】台湾の陳建仁・衛生署長(衛生相)
は20日夜、ジュネーブ市内で読売新聞と会見し、日本への
観光ツアーに参加した台湾人医師(26)の新型肺炎(重症
急性呼吸器症候群=SARS)感染が確認された問題につい
て、「心からのおわびを日本国民に伝えたい」と述べるとと
もに、台湾が市民の海外渡航にあたり、「SARSへの感染
の可能性があるか否か、より厳格な審査をし、規制する」と
表明した。

この医師については、院内感染の兆候があったにもかかわら
ず、海外渡航が許可されたことに、批判が集まっているが、
陳氏は「台湾は、今回の過ちから教訓を学んだ」と語り、特
に病院関係者を対象とした審査の厳格化を考慮していること
を明らかにした。

台湾でSARS感染の拡大が止まらないことについては、
「4月24日に院内感染がピークを迎えた。日本と同様、台
湾では病床数の多い大病院が多いことから院内感染が広がっ
た。ただ、その後、シンガポールに学び、病院の外に発熱者
を診察する場所を別途、設けるなど対策を取っており、今後、
効果が上がることを期待している」と説明した。

台湾のWHO年次総会へのオブザーバー参加は、今年も中国
の反対により実現しなかった。中国は、「中国の一部である
台湾でのSARS対策に、中国政府は十分に協力している」
(呉儀・副首相兼衛生相)としているが、陳氏は「中国から
は、情報の提供をはじめ、一切の協力がない」と強く反発。
「SARSという感染症が猛威をふるう中、台湾だけが国際
的な予防システムから抜け落ちているのは、周辺国にとって
も合理的ではない」と訴えた。

陳氏は今月16日に前任者がSARS拡大で引責辞任したの
を受け、就任したばかり。WHO年次総会に合わせジュネー
ブを訪れているが、WHO関係者との対話は実現していない
という。

(2003/05/21/10:47 読売新聞WEB版)