WHO、SARSワクチン開発へ

朝日新聞WEB版
2003/06/19/06:01

  新型肺炎SARS対策を進める世界保健機関(WHO)は18日、クアラルンプールで開かれた専門家会議で、日米を含む世界の研究機関が参加するワクチン開発ネットワークを立ち上げる方針を決めた。開発に必要となる情報や試料を共有し、効率的に研究を進める。WHOが特定の感染症のワクチン開発に乗り出すのは異例のことだ。

 WHOは日米のほか、香港、シンガポール、ドイツ、カナダなどにある約30の大学や研究機関に対し、ワクチン開発に関するアンケートをした。今後、その中からネットワークの参加機関を絞り込み、8月にWHO本部のあるジュネーブで第1回会合を開く。日本では国立感染症研究所(東京)が参加候補に挙がっている。

 ワクチン開発には医薬メーカーの技術も欠かせないため、何らかの形でネットに加わってもらうことも検討中だ。

 インフルエンザ対策などでは、WHOがウイルスや流行情報を公開し、メーカーによるワクチン開発を側面支援してきた。しかし、SARSでは実験に使えるウイルスが限られ、厳重な管理も求められることから、ワクチン開発に直接取り組むことにした。開発に成功すれば、ワクチン生産はメーカーに委託されるとみられる。

 WHOは3月半ば、SARS研究にかかわる9カ国13機関のネットワークを立ち上げ、情報や試料を交換しつつ研究を進め、わずか1カ月間で病原体を突き止めた。ワクチン開発でもこの手法が有効と判断した。ただ、開発に成功した場合の特許をどうするか、ほかの感染症対策とは異なる特別扱いをしていいのか、などの課題は残る。 (朝日新聞 03/06/19 06:01)


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