Medical Tribune
2003年11月6日号 / Vol.36 NO.45 / P.50
− ウエストナイルウイルス感染症 −
NIAIDが革新的治療法の臨床試験開始へ
イスラエルの免疫グロブリンを投与
〔米メリーランド州ベセズダ〕 米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID,ベセズダ)のAnthony
S. Fauci所長は,ウエストナイルウイルス(WNV)感染者を対象に試験的な治療法を評価する臨床試験を実施するため,全米36か所で有志被験者の募集を開始したと発表した。同研究は,WNV感染症の新たな予防法と治療法を開発するNIAIDによる取り組みの一環として行われる。
脳炎に対する効果を期待
Fauci所長は「WNVは今年も米国で問題になっているが,昨年よりも急速かつ広範囲に拡大していると思われるため,公衆衛生当局は強い懸念を示している」と述べ,「NIAIDはWNVに対する具体的な治療介入を評価する今回の臨床試験を積極的に支援する」と表明した。NIAIDは米国立衛生研究所(NIH)に所属している。
同所長は「現在のところ,医師はWNVに感染した患者に対し,支持的ケアを提供するにとどまっている。本研究が,最終的には医師と患者に有用な治療選択肢を提供する結果となることを願っている」と述べた。
この研究では,WNV抗体の投与により,感染者の多くを死に至らせる脳炎などの重篤な症状を回避しやすくなるかどうかを評価する。
NIAIDと共同で今回の研究を支援するOmrix社(イスラエル)は,WNV抗体を含有する免疫グロブリン(Ig)製剤を製造している。同社は高抗体価のWNV抗体を持つイスラエル人ドナーの血漿を使用して,Ig治療薬を開発した。イスラエルでは過去約10年間,WNVが風土病となっており,イスラエル人献血者の血中にはWNV抗体が含まれていることが多い。研究チームは,WNV抗体を含有するIg製剤(Omr-IgG-amTM)の投与により,WNV脳炎を発症した患者または発症リスクのある患者の脳内で,ウイルスが有効に撃退されることを願っている。
安全性と耐容性を評価
研究責任者でアラバマ大学(アラバマ州バーミングハム)のRichard Whitley博士は「本研究から,脳炎の治療におけるIgG含有WNV抗体の静脈内投与の安全性について,重要な情報が得られるだろう」と述べている。研究では,Omr-IgG-amTMの安全性と耐容性を評価するほか,死亡または神経障害の予防に対する同薬の効能についてデータを収集する。また,重度のWNV感染症の自然史の特徴を解明するのに役立つと見られる。
研究チームは,WNV関連の脳炎に感染しているか,または臨床症状とWNV抗体の存在から脳炎を発症するリスクが高いと判断された18歳以上の入院患者100例の参加を求めている。患者は,米国産の標準的なIg(WNV抗体は検出不可)を静脈内投与される第
1 群,Omr-IgG-amTMの投与を受ける第 2 群,プラセボを投与される第 3 群のいずれかにランダム化割り付けされる。すべての参加者は,薬剤またはプラセボを単回投与され,最初の連日
1 週間とその後の第 7 日,第14日,1 か月,3 か月の時点で観察される。
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