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低侵襲心臓手術(ていしんしゅうしんぞうしゅじゅつ)(Minimally Invasive Cardiac Surgery:MICS)
はじめに
心臓外科手術
では胸部前面中央にある胸骨
を縦に切開し胸を観音開きにして心臓に到達する胸骨
正中切開法が標準的で、現在もほとんどの症例で用いられてきています。この方法では喉元からみぞおちにいたる約20〜30cmほどの切開を必要とします。
心臓手術において、このような大きな傷を必要とする理由は、心臓自体の手術視野を得る必要があることと同時に心臓を安全に停止させ手術中に心臓を保護する体外循環操作のためにスペースが必要だからです。
それに対して、胸骨の一部分のみを切開する、または胸骨は全く切らずに側胸部の乳房の下あたりを7〜10cmぐらい小さく切開して、侵襲性の低い手術をすることを「低侵襲心臓手術」と言います。大分大学心臓血管外科ではH22年より先天性心疾患にこの方法を採用し、本年より心臓弁膜症に対しても行うようになりました。
低侵襲心臓手術とは?
低侵襲心臓手術
(Minimally Invasive Cardiac Surgery: MICS,ミックスもしくはミクスと呼ばれます)とは従来行ってきた大きな胸骨切開を行なわず、小さな傷から心臓に到達して、心臓手術を行なう手術法のことを指します。
近年の手術器具と医療材料の進歩により、小さな切開から心臓手術を行う低侵襲心臓外科手術はより安全にそして確実に行えるようになってきました。しかしどこの病院でも受けられる手術ではなく、まだまだ限られた病院でしかできない特別な手術ではあります。
低侵襲心臓手術はどのような点が良いのですか?
この手術の特徴は,患者さんにやさしい手術であることです。胸骨を大きく切開しなくて済むため、術後の出血が少なく、縦隔炎という合併症を起こしにくいというメリットがあります。また、車の運転や重いものを持つといった日常生活にも早く復帰できるほか、比較的激しい運動(ゴルフやテニスを含む)も早期に可能となります。つまり術後の回復が早く、日常生活に早く復帰できるのです。
もちろんこの低侵襲心臓手術は、美容上の利点もあります.特に女性は写真のように、右乳房下の皮膚(ひふ)を切ることで小さな傷がつきますが、術後の傷は乳房に隠れ、より目立ちにくくなります。 また左右のソケイ部(足の付け根)には人工心肺の管を入れるための小さな傷がつきます.
低侵襲心臓手術のデメリットはありますか?
低侵襲で傷が小さく美容上の利点も大きいですが、患者さんによっては
皮膚切開側の右乳房の皮膚感覚低下を認めることがあります。これは術後の時間経過とともに回復する人がほとんどですが、その回復程度は人それぞれです。
また、小さな傷をとおしての特殊な道具を使っての手術になりますので、通常の手術より若干手術時間が長くなる傾向があります。小切開での手術を予定していても手術中の判断で通常の心臓手術法である胸骨正中切開に切り替える可能性もあります。
低侵襲心臓手術はどんな心臓の病気でおこなえるのですか?
現在,低侵襲心臓手術とくに右小開胸による心臓手術は、心房中隔欠損症(生まれつき心臓の壁に穴があいている)や、弁膜症(僧帽弁疾患、
大動脈弁疾患
、三尖弁疾患)に対しての弁置換術もしくは弁形成術で行っています。
他には心臓腫瘍の摘出術
などがよい適応となります。しかし、上記疾患で必ずしも可能であるわけではなく、動脈硬化の程度、合併症などでは適応できない場合もあります。
詳しくは、かかりつけの担当医に相談されるか、大分大学心臓血管外科医局長 首藤 敬史までお尋ねください。
費用は高いのですか?
低侵襲心臓手術を大なうために手術費用や入院費用が高くなることはありません。通常の心臓手術と同じ健康保険が適用されます。
そのほかわからないことがありましたら、何なりとお気軽におたずねください。
◆お問い合わせ
TEL:097-549-4411(病院代表)
准教授 首藤敬史