教授ごあいさつ

教授ごあいさつ

 令和3年10月1日付で本講座の教授を拝命いたしました緒方正男です。当講座は血液内科と腫瘍内科の2つの診療科で構成されています。血液内科は昭和56年、糸賀敬教授主宰による第二内科学講座の開講とともにスタートし、主宰を引き継がれた那須勝教授、門田淳一教授のもと活動を行ってまいりました。腫瘍内科は比較的新しい専門分野であり、平成19年に白尾国昭教授のもと発足しました。平成25年の内科学講座の再編時に血液内科と腫瘍内科が一体となることとなり、このときに白尾教授が主宰を引き継ぎ現在の形である腫瘍・血液内科学講座の開講に至りました。私はこの新たな講座における2代目の教授となります。これからの私たちの教室のあり方や理念を以下のように考え、教室員一丸となって取り組んでいきたいと考えています。

臨床について
 私たちが担当する病気は血液内科においては白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの血液腫瘍や再生不良性貧血などの造血障害、および凝固異常をきたす疾患などであり、腫瘍内科においては胃癌、肺癌、原発不明癌など多岐にわたります。これらの疾患に対する様々な医療・医学技術の開発・進歩により、その治療成績は着実に向上しています。血液腫瘍においては多くの患者で治癒や長期生存が期待されるようになってきました。
 私たちは特定機能病院の役割である高度の医療の提供、高度の医療技術の開発に取り組み、それぞれの患者さんの病態に最も適した個別化治療を行います。血液内科では適応のある患者さんには造血幹細胞移植や新規細胞療法を積極的に行い、腫瘍内科ではがんゲノム医療を推進します。そして医療の進歩の恩恵を最良の形で患者さんに提供することを目指します。また私たちは疾患の治療を行うのみではなく、患者さんや家族の願いを受け止め、共に良好な経過の喜びを分かち合い、不幸な経過の悲しみを受け止めていく医師でありたいと考えています。

研究について
 全国レベルの臨床試験や臨床研究には共同研究者として積極的に参加し、診断や治療法に関するエビデンス確立に貢献します。一方、私たちは日常診療よりの疑問を出発点としたオリジナルの研究にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。私たちは様々な医学情報データにアクセスできますが、それでも血液・腫瘍疾患の診療では未解決のことに度々遭遇し、その対応を迫られます。例えば境界領域の診断、治療法が確立していない疾患の治療選択、特異な合併症への対応、移植適応やドナー選択などです。私は造血幹細胞移植後のHHV-6脳炎と呼ばれる特異なウイルス性脳炎に遭遇し、この解明と克服に取り組んできました。臨床上の疑問を明らかとする研究の成果は、かならずどこかの似た思いで悩んでいる臨床医の助けとなるとの信念のもと、研究成果を示していきたいと考えています。

社会とのつながりについて
 私たち医師は医局、病院、大学、地域、保険制度、学会など様々な組織や社会的な枠組みやのなかで医療を行わせていただいています。多くの先人がそれぞれの枠組みにおいて大変な努力で積み重ねたものの上に現在があります。私たちもその一員として責任を担い、より良い医療を後世に残すために活動してまいりたいと考えています。