本院で造血幹細胞移植を受けられた患者さん・ご家族の皆様へ

1.研究の名称
   サイクリーブPCR法を用いた迅速ヒトヘルペスウイルス6Aと6Bの鑑別

2.研究の目的及び意義
同種造血幹細胞移植は、ヒトの体内で感染防御を担っている白血球をほぼゼロの状態にする強力な治療です。造血幹細胞移植後の患者さんはしばしばヒトヘルペスウイルス6型脳炎を発症し、時として死に至ることもあります。このウイルスには遺伝子的には非常によく似たヒトヘルペスウイルス6A と6Bが存在します。脳炎をおこすのはヒトヘルペスウイルス6Bですが、現在の検査システムでは6Aと6Bを容易に区別することができません。この臨床研究は、「造血幹細胞移植後患者さんのヒトヘルペスウイルス6Aと6Bを区別し脳炎を発症するリスクを的確に確認できるシステムの構築」を行うという研究目的で施行いたします。
   
【背景】
極度の免疫不全状態に陥る造血幹細胞移植後の患者さんは様々な感染症を引き起こします。例えば、ヒトヘルペスウイルス6型は日本人では2歳までにほぼ100%感染するといわれている突発性発疹の原因ウイルスであり、6Aと6Bの2種類があります。大多数の人は再活性化をすることなく一生を終えます。しかし、造血幹細胞移植後の患者さんではこのウイルスの再活性化により脳炎を起こす場合があります。これまでの研究で、ヒトヘルペスウイルス6Aと6Bのうち、脳炎を発症させる原因となるのはヒトヘルペスウイルス6Bであることが明らかとなっています。大分大学医学部付属病院血液内科では、造血幹細胞移植後患者さんの血漿中におけるヒトヘルペスウイルスの量を測定してきました。しかし、従来の検査方法では2種類あるヒトヘルペスウイルス6Aと6Bを区別して測定することができませんでした。この問題を解決するために、ウイルスの新しい測定法としてサイクリーブPCR法と呼ばれる検査方法があります。

   【目的】
本研究の目的は、従来の方法と同時間内で鑑別が可能なサイクリーブPCR法を用いてヒトヘルペスウイルス6Aと6Bを鑑別することです。
   【意義】
造血幹細胞移植後患者さんにおいては、脳炎発症の原因となるヒトヘルペスウイルス6Bの再活性化を正確に測定する必要性があります。サイクリーブPCR法を用いることで、区別が非常に難しいヒトヘルペスウイルス6Aと6Bを一度の測定で区別して検査することが可能となり、造血幹細胞移植後患者さんの脳炎発症の危険性をより早期に見つけることが期待されます。

3.研究方法及び期間
   【研究方法】
【試料の種類】
 造血幹細胞移植後患者さんの血漿中の核酸(DNA, RNA)
【情報の利用目的】
脳炎発症の原因となりうるヒトヘルペスウイルス6Bの検出。血漿より得られるヒト遺伝子に関する解析は個人情報保護のため行わないこととします。
【科学的合理性の根拠】
発熱などの感染兆候を伴って、再活性化したヒトヘルペスウイルス6Bの遺伝子(核酸)が血漿中に大量に含まれることが予想されます。ヒトヘルペスウイルス6Bのウイルス量を迅速に確定することで速やかに治療戦略を考えることが可能になります。
【手順】
・発熱などの感染兆候が認められた患者さんより治療のために採取された血液の残りを研究に使用します。
・治療目的で採取された患者さんの血液検体を7ml使用し、サイクリーブPCR法でStepOne(ABI社)という機械にかけて、血漿中の核酸(DNA, RNA)解析を行います。

   【研究期間】
(倫理委員会承認日)から2024年3月31日までです。

4.研究対象者として選定された理由
 同種造血幹細胞移植後は体の中の白血球が減少するため、様々な感染症やウイルス感染に対して抵抗力が著しく減少しています。これまでの検査と比較して、ヒトヘルペスウイルス6B再活性化による脳炎発症の危険性をより正確に判断できるよう本研究で検証します。

5.研究対象者に生じる負担並びに予測されるリスク及び利益
日常診療における臨床的判断で採取された血液の残余検体を用います。本研究の検査のみを目的として血管穿刺を行うことはありません。そのため研究対象の方の負担は極めて小さいと考えられます。また、研究対象者の方に費用負担が生じることはありません。
   
6.遺伝的特徴に関する重要な知見
    核酸情報解析時にヒト遺伝子に関する解析は一切行いません。

7.健康被害に対する補償および賠償
本研究では日常診療における臨床的判断で採取された血液の残余検体を用います。健康被害を来す可能性は極めて低いと考えられます。万が一健康被害が発生した場合には特別や補償制度はなく、賠償も行われませんが、迅速かつ適切な治療を行います。

8.研究への参加は自由であること
この研究へ参加するかどうかはあなたの自由です。また,一度参加すると決めた場合でも,いつでも撤回することができます。同意されなくても,研究対象者等が不利益な取り扱いを受けることはなく,当院では同じように最善の医療を提供いたします。
ただし,同意を取り消した時すでに研究結果が論文などで公表されている場合のように,研究結果からあなたを外すことが出来ない場合があります。

9.個人情報等の取扱い
   【匿名化の方法】
提供者の氏名を記号などに置き換えて、提供者の氏名が識別できないようにする匿名化を行います。ただし、必要な場合には提供者の特定が出来るよう、記号とその提供者の氏名が分かる対応表を保有しますが,この対応表は鍵付きの棚で保管します。
    
   【公表の配慮】
    この結果はきちんと記録し,学会や医学雑誌に発表されることもあります。いずれの場合にもあなたのプライバシーに関するすべての秘密を保持することを保証します。

10.試料および情報の保存
【試料】血漿並びに血漿中の核酸
 保存方法:腫瘍・血液内科学講座のフリーザーにて血漿:-80℃、核酸:-20℃に凍結保存します。
 期  間:最終の論文・学会発表の後5年間です。
 廃棄方法:匿名化のIDのみの検体を感染物として廃棄します。
【情報(研究に用いられる情報に係る資料を含む)】
 保存方法:匿名化IDと患者名の対応表は紙媒体とし、腫瘍・血液内科学講座の鍵付きの棚に保管します。匿名化IDをもとに収集されたデータ・解析データは電子媒体としてパスワードを設定して保管します。
 期  間:最終の論文・学会発表の後10年間です。
 廃棄方法:バックアップデータを含めすべて復元できないよう消去します。紙媒体はシュレッダーにて廃棄します。

11.他機関への試料・情報の提供
    この研究で得た試料・情報は他の研究機関へ提供しません。

12.研究資金
本研究は研究資金を特に必要としませんが、費用が発生した場合は腫瘍・血液内科学講座の寄附金を使用します。

13.本研究に係る利益相反
    本研究は上記の公的な資金を用いて行われ,特定の企業からの資金は一切用いません。「利益相反」とは,研究成果に影響するような利害関係を指し,金銭及び個人の関係を含みますが,本研究ではこの「利益相反」は発生しません。

14.相談等の対応
   【相談窓口】
    担当者氏名:河野 利恵(かわの りえ)
    連 絡 先:大分大学医学部腫瘍‧血液内科学講座
 電話 097-586-6275
   【公開先】
    大分大学医学部腫瘍‧血液内科学講座ホームページ
    URL:http://www.med.oita-u.ac.jp/syuyou/index.html

 15.取得した試料・情報の将来の研究利用 
この研究で取得した試料・情報について将来別の研究に利用することはありません。

 16.研究に関する情報公開
ご希望があれば,個人情報の保護や研究の独創性の確保に支障を来たさない範囲内で,この研究計画の内容を見ることができます。詳しくは上記の相談窓口へお問い合わせください。

17.研究組織
  【本学(若しくは本院)における研究組織】
所属‧職名 氏名
研究責任者 大分大学医学部附属病院血液内科‧病院特任助教 河野 利恵
研究分担者 大分大学医学部附属病院輸血部‧講師 緒方 正男
大分大学医学部腫瘍・血液内科学講座‧技術補佐員 阿部 由則
大分大学医学部附属病院血液内科‧助教 本田 周平
大分大学医学部附属病院血液内科‧助教 高野 久仁子
大分大学医学部附属病院血液内科・病院特任助教 吉田 奈津美

研究責任者氏名      河野 利恵          
連  絡  先 大分大学医学部腫瘍‧血液内科学講座
(電話) 097-586-6275   

2020年05月12日