2015年11月~2021年11月に、未治療CCR4陽性の高齢者aggressive ATLに対するモガムリズマブ併用CHOP-14の第Ⅱ相試験に参加された方へ

「CCR4遺伝子変異と治療効果および有害事象発現との関連: Moga-CHOP-14試験附随研究」の情報公開文書
1 研究について
成人T細胞白血病・リンパ腫(Adult T-cell leukemia-lymphoma: ATL)は、HTLV-1感染に関連する造血器腫瘍(血液のがん)であり、その亜型である急性型、リンパ腫型および予後不良因子を持つ慢性型においては、aggressive ATLと呼ばれ、全身化学療法による治療を必要とします。このaggressive ATLに対する化学療法の治療成績は十分とは言えず、治癒が期待できる同種造血幹細胞移植療法は比較的若年(65-70歳未満)かつ臓器機能が保たれている場合に限られています。
ATLの約90%において、そのがん細胞の表面にCCR4(CC chemokine receptor 4)と呼ばれる蛋白質が発現しており、CCR4に対するモノクローナル抗体(モガムリズマブ、商品名:ポテリジオ)が日本を中心として開発されてきています。
2015年11月から開始された、未治療高齢者ATLの患者さんを対象とした、モガムリズマブ併用CHOP療法の多施設共同臨床試験(以下、Moga-CHOP試験)は、2021年11月に患者登録が終了し、現在フォローアップを行っており、2022年度中には主な結果が公表される見込みです。
2018年、モガムリズマブ併用化学療法の治療効果がCCR4の遺伝子変異に関連していることが報告され、注目されています。この報告によると、CCR4の遺伝子変異は約30%のATLにおいて認められ、その遺伝子変異によってCCR4蛋白ががん細胞の表面に発現が維持されやすくなる結果、モガムリズマブの治療効果がより発揮されやすいと推定されています。この知見は、まだ限られた患者さんの臨床データに基づくものであるため、このCCR4遺伝子変異の測定は普及していないのが現状です。
そこで、このCCR4遺伝子変異の意義を明らかにする目的で、上述したMoga-CHOP試験に参加された患者さんの診断に用いた病理組織標本あるいは保管しているがん細胞の組織(がんの遺伝子を含む)を用いて、CCR4遺伝子変異の有無を確認し、Moga-CHOP試験で得られた臨床情報(治療効果および副作用発現)との関連を調べる研究を計画しました。
この研究を実施することについては、名古屋市立大学医学系研究倫理審査委員会(所在地:名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1)において医学、歯学、薬学その他の医療又は研究に関する専門家や専門以外の方々により倫理性や科学性が十分であるかどうかの審査を受け、承認されたうえで、研究を実施する研究機関の長から研究を実施することについての許可を受けています。また委員会では、この研究が適正に実施されているか継続して審査を行います。
なお、本委員会にかかわる規程等は、以下のホームページよりご確認いただくことができます。
名古屋市立大学病院臨床研究開発支援センター ホームページ “患者の皆様へ”
http://ncu-cr.jp/patient
2 この研究で用いるあなたの試料・情報の利用目的及び利用方法について
すでに、患者さんの診断に用いた病理組織標本の一部あるいは保管しているがん細胞の組織(がんの遺伝子を含む)を名古屋市立大学に収集し、CCR4遺伝子変異を測定します。測定場所は、名古屋市立大学大学院医学研究科臨床病態病理学教室にて実施いたします。
3 この研究で用いるあなたの試料・情報の内容について
この研究では、2015年11月から2021年11月までに未治療高齢者ATLの患者さんを対象とした、モガムリズマブ併用CHOP療法の多施設共同臨床試験(Moga-CHOP試験)に参加された患者さんを対象として、診断に用いた病理組織標本の一部あるいは保管しているがん細胞の組織(がんの遺伝子を含む)を用いて、CCR4遺伝子変異を測定します。そのCCR4遺伝子変異の有無と、Moga-CHOP試験の臨床データ(治療効果および副作用)との関係を調査します。
4 あなたの試料・情報を利用させていただく研究者等について
この研究では、以下の研究者があなたの試料・情報を利用させていただきます。
研究責任者: 名古屋市立大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学 楠本 茂
研究分担者: 名古屋市立大学大学院医学研究科 臨床病態病理学 稲垣 宏
研究分担者: 名古屋市立大学大学院医学研究科 臨床病態病理学 坂本 祐真
5 本研究施設における研究責任者等の氏名
この研究は、研究責任者/個人情報管理者が責任をもって試料・情報を管理します。
研究機関名: 名古屋市立大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学
研究責任者: 氏名 楠本 茂
個人情報管理者: 氏名 稲垣 宏(臨床病態病理学)

なお、この研究は、多機関共同研究であるため、以下の研究機関が参加しています。
【研究代表者】
研究機関名: 名古屋市立大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学
研究代表者: 楠本茂
【共同研究機関】
鹿児島大学病院 血液・膠原病内科 石塚 賢治
国立病院機構 九州がんセンター 血液内科 末廣 陽子/崔 日承
公益財団法人慈愛会 今村総合病院 血液内科 宇都宮 與
大分県立病院 血液内科 大塚 英一
日本赤十字社長崎原爆病院 血液内科 城 達郎
佐世保市総合医療センター 血液内科 森内 幸美
国立病院機構 熊本医療センター 血液内科 日高 道弘
熊本大学病院 がんセンター・外来化学療法センター 野坂 生郷
大分大学医学部附属病院 血液内科 緒方 正男
長崎大学病院 血液内科 今泉 芳孝
福岡大学病院 腫瘍・血液・感染症内科 高松 泰
岩手医科大学附属病院 血液腫瘍内科 伊藤 薫樹
国立病院機構 長崎医療センター 血液内科 吉田 真一郎
宮崎大学医学部附属病院 血液内科 下田 和哉
和歌山県立医科大学附属病院 血液内科 田村 志宣
国立病院機構 鹿児島医療センター 血液内科 大塚 眞紀
近畿大学病院 血液・膠原病内科 松村 到
くまもと森都総合病院 血液内科 鈴島 仁
JR大阪鉄道病院 血液内科 高 起良
7 あなたのプライバシーに関わる内容は保護されます。(個人情報等の取り扱い)
あなたの試料・情報は、それらから個人を特定する情報が削られ、代わりに新しく符号がつけられます(匿名化)。あなたとこの符号とを結びつける対応表は、あなたの試料・情報を頂いた病院や研究機関で厳重に管理され、あなたのプライバシーに関わる情報(住所・氏名・電話番号など)は保護されます。報告書などやこの研究を通じて得られたあなたに係わる記録が学術雑誌や学会で発表される場合も、得られたデータがあなたのデータであると特定されることはありません。
8 あなたの試料・情報の利用又は他の研究機関への提供を希望しない場合
この研究について知りたいことや、ご心配なことがありましたら、遠慮なくご相談ください。また、この研究に、あなたの試料・情報の利用されることや他の研究機関への提供されることを希望されない場合は、ご連絡ください。
研究の進捗状況によっては、個人情報の特定ができない状態に加工されており、あなたのデータを取り除くことができない場合があります。
【問い合わせ先】
研究実施機関: 名古屋市立大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学
連絡先: 052-853-8738
(対応可能時間帯)8時30分から17時まで(平日)
対応者:
名古屋市立大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学 准教授 楠本 茂

【当院での問い合わせ先】
大分県由布市挾間町医大ケ丘1-1
大分大学医学部 腫瘍・血液内科学講座
連絡先:097-586-6275
(対応可能時間帯)8時30分から17時まで(平日)
対応者:腫瘍・血液内科学講座 教授 緒方 正男

8 研究に関する情報公開
 この研究の成果は、学術雑誌や学術集会を通して公表する予定ですが、その際も参加された方々の個人情報などが分からない状態で発表します。
9 研究により得られた研究成果等の取り扱い
この研究で得られるデータ又は発見に関しては、研究者もしくは研究者の所属する研究機関が権利保有者となります。この研究で得られるデータを対象とした解析結果に基づき、特許権等が生み出される可能性がありますが、ある特定の個人のデータから得られる結果に基づいて行われることはありません。したがって、このような場合でも、あなたが経済的利益を得ることはなく、あらゆる権利は、研究者もしくは研究者の所属する研究機関にあることをご了承ください。
10 この研究の資金源及び利益相反(COI(シーオーアイ):Conflict of Interest)について
研究一般における、利益相反(COI)とは「主に経済的な利害関係によって公正かつ適正な判断が歪められてしまうこと、または、歪められているのではないかと疑われかねない事態」のことを指します。具体的には、企業等が研究に対してその資金を提供している場合や、研究に携わる研究者等との間で行われる株券を含んだ金銭の授受があるような場合です。このような経済的活動が、研究の結果を特定の企業や個人にとって有利な方向に歪曲させる可能性を判断する必要があり、そのために研究の資金源や、各研究者の利害関係を申告することが定められています。
本附随研究は、以下の研究費の使用を予定しています。
・文部科学省および日本学術振興会による科学研究費助成事業により交付された研究助成費(助成番号:20K16177)および公益財団法人 日東学術振興財団により交付された第36回(2019年度)研究助成金
・日本医療研究開発機構研究費(次世代がん医療創生研究事業)「研究開発課題名:がん細胞および免疫応答解析に基づくがん免疫療法効果予測診断法の確立(分担研究開発課題名:抗CCR4抗体(mogamulizumab)治療を施行されたATL患者の免疫動態解明によるバイオマーカー同定)」(課題管理番号:21cm010630lh0005)
なお、本体研究であるMoga-CHOP-14試験は、協和キリン株式会社の研究資金提供によって実施されています。
また、名古屋市立大学においては、この研究について、企業等の関与と、研究責任者および研究分担者等の利益相反申告が必要とされる者の利益相反(COI)について、名古屋市立大学大学院医学研究科医学研究等利益相反委員会の手続きを終了しています。

2022年05月23日