クリニカルクラークシップstage2

1. 実習の基本方針(目標・到達目標)

 腫瘍・血液内科は、がん化学療法(支持療法を含む)の実践が主たる専門であり、これを習得することが第一の目標である。また、それ以外にがん診療全体におけるコーディネーターとしての役割も持っているため、がんの診断、治療体系全般(内科、放射線、外科治療、緩和治療)、各診療科との連携などについて学ぶことも目標である。
 がんは死亡原因の第一位であり、罹患率の高い難治性疾患として認識されている。これらの中でも罹患率の高い肺がん、消化器がん(食道・胃・大腸・肝・胆・膵)患者や造血幹細胞移植などの治療を要する血液がん患者を指導医とともに担当することにより、上記目標の達成に努める。また、非腫瘍性の血液疾患についても学習し、内科医としての全身管理の基礎を学ぶ。近年、分子標的薬をはじめとした新規治療薬が次々に開発されており、これらの開発について臨床試験・治験などを通して学ぶ。
(1) 呼吸器がん、消化器がん、血液がんでの一般的な診断までの手順、治療法の選択の論理的思考を学習する。
(2) 担当患者個々の特異性、治療上の問題点を抽出し、それに対する解決方法を自ら考察する。
(3) 身体的な診察だけでなく、病状の告知、そのサポート、チーム医療について学び、よりよい患者とのコミュニケーション、他の医療者とのコミュニケーションについて学習する。
(4) 新薬・新治療開発のための治験・臨床試験について学び、社会的側面からみたがん治療を考察する。
(5) 担当患者について、現病歴、現症、治療方針について決められた時間内でプレゼンテーションを行う。

2. 実習の方法(内容・行動指針)

 知識を統合し、患者の治療にどのように役立てていくかを論理的に考えていくための学習を行う。そのために、指導医は理解を促すための課題を与え、学生と治療方針について協議する。
(1) 指導医のミニレクチャーを通して、一般的な診断までの手順、治療法の選択について学ぶ。
(2) 病棟での患者とのコミュニケーションや診察を通して以下の目標を達成する。基本的には、1名の学生に対して、腫瘍内科医、血液内科医複数人が指導を担当する。指導医が、外勤もしくは外来などで指導を行得ない場合には、病棟担当医が指導に当たる。学習すべき処置や治療が行われる場合、指導医は、担当以外の学生も含めて指導を行う。
(ア) 基本的な診察手技を行い、理学所見を正しく把握する。
(イ) 血液検査所見、画像所見について理解し、今後の検査スケジュールを構築できる。
(ウ) 患者診察から情報を得た治療上の問題点を把握し、解決のための方法を指導医とその妥当性や他の可能性について話し合う。
(3) 以上をふまえて、実習終了時にプレゼンテーションを行う。以下の点を評価する。
(ア) 症例の診察が適切に行われ、理学所見を得ることができているか
(イ) 血液検査や画像所見が理解できているか
(ウ) 疾患についての基礎的知識(ガイドラインに沿った治療方針など)を学んだか
(エ) 問題点を抽出し解決のための論理的考察がなされているか
(オ) 簡潔かつ適切なプレゼンテーションが行えるか

3. 実習上の注意事項

医師としての自覚と学生としての謙虚さをもって患者さんと接すること。特に腫瘍・血液内科では予後不良な患者や全身状態が不良の患者が多いため、言葉づかい、話す内容などについて注意する。

4.「医学生の臨床実習における医行為と水準」の例示

レベルⅠ:指導医の指導・監視の下で実施されるべき
一般手技:体位交換、移送、皮膚消毒、外用薬の貼付・塗布、気道内吸引、ネブライザー、静脈採血、末梢静脈確保、胃管挿入、尿道カテ挿入抜去、注射(皮下・皮内・筋肉・静脈内)、診療記録
検査手技:尿検査、末梢血塗抹標本、微生物学的検査、超音波検査(心・腹部)、12誘導心電図、経皮的酸素飽和度モニター
診察手技:医療面接、診察法(侵襲性、羞恥的医行為は含まない)、バイタルサイン、高齢者の診察(ADL評価、CGA)
レベルⅡ:指導医の実施の介助・見学が推奨される
一般手技:中心静脈カテ挿入、動脈採血・ライン確保、腰椎穿刺、ドレーン挿入・抜去、輸血
検査手技:エックス線検査、CT/MRIの介助・見学

5. 実習スケジュール

腫瘍内科4週間コース 2名
血液内科4週間コース 3名
各コース共通のレクチャーを予定しています。
(詳細未定:昨年度は感染症、血液細胞形態、輸血、分子標的剤、貧血、造血幹細胞移植、国家試験解説がテーマ)。
血液内科コースでは希望があれば学外での実習も検討しております。