血液の細胞のはなし

私たちの体内では赤血球、白血球、血小板などのさまざまな血液細胞がはたらいています。これら血液細胞はすべて‘骨髄’のなかで作られています。この骨髄のなかにはすべての血液細胞に成長することができる‘造血幹細胞’という細胞がいます。

抗がん剤治療はがん細胞のみならず、正常な細胞へも障害を起こすことがあります。特に血液細胞は細胞が盛んに増殖しているため抗がん剤の作用を受けやすいものとして知られています。

ここではそれぞれの血液細胞の説明をさせて頂きます。

赤血球

赤血球:
正常値 男性 450-500万/μl, 女性350-450万/μl
ヘモグロビン:
正常値 男性 13~18g/dl, 女性; 11~15g/dl

赤血球はドーナツ状の変形する能力に富む細胞です。細胞の中にヘモグロビンという鉄を含んだタンパク質を持っています。このヘモグロビンは酸素とくっつきやすい性質を持っています。

ヘモグロビンに結合した酸素は赤血球にのって全身に運ばれます。私たちの体内には60兆もの細胞が存在していますが、すべての細胞で酸素が必要です。酸素がない状態に比べ酸素がある状態であれば約20倍もの効率でエネルギーを得ることができます。細胞がエネルギーを作るために酸素が必要なのです。その酸素を運ぶのがヘモグロビン、赤血球となります。

もし赤血球やヘモグロビンが減ってしまうと酸素不足となり細胞の機能が落ちてしまいます。この状態を’貧血’と呼んでいます。

貧血は食事や鉄分の投与でよくなるのでは?というご質問を受けますが、それは鉄欠乏性貧血に限ったことでして、抗がん剤治療で障害された赤血球を回復させることは困難です。貧血の度合いが重度の場合には輸血療法が必要となります。

白血球

白血球:
正常値 4000~9000/μl
白血球は赤血球や血小板と異なり核というものを細胞のなかに持っています。白血球は好中球(こうちゅうきゅう)、リンパ球、好酸球(こうさんきゅう)、好塩基球(こうえんききゅう)、単球の5種類に大別することができます。もっとも大切なのは好中球です。好中球はからだを病原体から守るために最前線で働いてくれています。

血液検査をするとこれら5種類の細胞は割合(%)で示されます。
全体の白血球数に割合を用いて計算をすると、それぞれの細胞の数が計算できます。
例)白血球数 6500/μl, 好中球 27%であった場合…
 好中球数 = 白血球数×好中球割合(%)÷100 = 1755/μl

特に好中球数が1000/μl以下になると感染症にかかる確率が上がり、好中球が500/μl以下になるといつ細菌や真菌(かび)の感染症を起こしてもおかしくない状態となります。

血液検査の際にはご自身の好中球の数が今いくつなのか把握されていることが望ましいです。
抗がん剤治療後にはG-CSF(好中球を増やす薬)を投与することがあります。

大切なことは、白血球が少ないと抵抗力が低下し感染症を発症しやすくなることを覚えておいていただき、発熱時に早急に感染症に対処することが重要とされています。

血小板

正常値 14.0-35.0×104/μl(14万~35万)
血小板は血液の細胞で最も小さいですが、止血に重要な働きをしています。血管に穴が開いてしまったときにその部位に集合して穴を塞ぎ止血をしてくれます。

もし血小板が少なくなると穴をふさぐ力が弱くなってしまい出血しやすくなってしまいます。血小板が3万以下になると出血症状が目立つようになり、2万以下では皮膚や粘膜に点状出血を生じたり鼻血が生じることがあります。

1万以下では吐血・下血などの消化管出血や脳出血などの重度の出血を生じることがあり十分な注意が必要です。

抗がん剤治療の血小板減少に対しては血小板輸血を行っていきます。血小板数が5000~2万の間で輸血を行っていくことが多いです。