教授挨拶

ご挨拶

大分大学医学部微生物学講座は、三舟求眞人大分医科大学副学長(現 名誉教授)が初代の教授として昭和55年に大分医科大学微生物学講座として開講され、平成11年4月に西園が第二代教授として就任した。その後国立大学の独立行政法人化、大分大学との合併などを経るとともに、平成12年には講座改編により感染分子病態制御講座と名称を変更したが、平成20年には再度の講座編成替えで元の微生物学講座に復した。めまぐるしい流れの中、講座を主宰して本年で14年目に突入した。

当教室の研究テーマは初代から現在に至るまでウイルス感染時の免疫応答と病態との解明、なかでも狂犬病ウイルス感染の発症病理機構の解明に力が注がれてきた。狂犬病は既に本邦で最後の報告がなされてから50年以上が経過し、我が国は世界でも数少ない狂犬病の清浄国となっている。しかし昨今の疾病のグローバル化に伴い、狂犬病は再び我が国において再興する可能性のあるre-emergingウイルス感染性疾患として認識されている。我々は国内にある大学医学部において狂犬病研究を行う唯一の講座としてその独自性を生かし、未だに世界中で多くの犠牲者のいる狂犬病について、ウイルス学的側面からばかりでなく、疫学的重要性さらには予防・治療へ向けた臨床的側面までも包含した総合的研究を行い、この疾病の重要性を次の世代にも絶やすことなく継承することをその勤めとしている。さらに、これ以外にも新興・再興微生物感染症の感染病態をグローカル(グローバル&ローカル)に捉えるために、フィールドを中心としたウイルス感染症に関わる研究と、それら病原微生物が引き起こす感染病態の分子的基盤や免疫応答についての研究をその中心に据えて日々研究活動に励んでいる。

現在の研究テーマは以下に大別される。

  1. 新興・再興感染症の研究、特に狂犬病に関する総合的研究
  2. 抗体を用いた新興再興感染症の診断・治療への応用
  3. グローカルな新興・再興感染症の(臨床)疫学研究(狂犬病、SFTS、ロタウイルス、SARS-CoV-2)
  4. HTLV-I Taxによる発癌機構の解明とNF-kBを標的とした制御法の開発

一方学生の教育に関しては、現在主に細菌学とウイルス学の講義・実習の領域を担当している。本学でも平成13年度から導入されたチュートリアル方式の開始から10年が経過した。これまでの系統講義中心の形式が臓器別・機能別の教育形式に改められ、細菌学、ウイルス学は「病態編」というチュートリアルコースの一環の中で「病原体」として行われている。学生自身が自ら学ぶ姿勢の涵養を図る中で、どのように学生自身が興味を持ち「微生物学・感染症学」を将来の医学・医療に直結できる内容を教授していくか、日々悩みながらも格闘しているところである。さらに今後医学教育の国際標準化が求められるようにもなってきており、関係各講座や教員の先生方と意見を交換しながら、弾力的な教育運営を心掛けていきたいと考えている。

さらに学外他機関(国立感染症研究所、長崎大学、日米医学協力専門部会)などとの共同研究、また抗体を用いた迅速診断法の開発や治療用のヒト型抗体の開発などで産学協同研究体制も積極的に推し進めておりより広範な立場から感染症を見据えることを考えている。数多くの病原微生物を題材として研究を進めることは、研究面のみならず将来を担う医療人に感染症に対する興味をより明快かつ雄弁に語ることができると信じている。

教授 西園 晃

微生物学講座の沿革

1980年 (故)三舟求眞人(現 大分大学名誉教授)が初代の教授として本講座を開講
1999年 西園晃が第二代教授として就任
2000年 講座改編により「感染分子病態制御講座」に名称を変更
2008年 講座編成替えに伴い「微生物学講座」に名称を変更