News 2022

 ◆学会(日本免疫学会)

2022年12月7日-9日



 12月7日-9日に第51回日本免疫学会学術集会が熊本城ホールで開催されました。大会長は、私の恩師である吉村昭彦先生です。当講座からは神山君、小坂君、佐知さん、有木君、イブさんが研究成果を発表しました。この秋、当講座の大学院生になったナンさんは、FIMSA Travel Awardsを受賞し大会長の吉村先生から直接賞状を渡されました。

神山長慶:Zika virus induces pathogenic T cell-attracting chemokines in the central nervous system and exacerbates experimental autoimmune encephalomyelitis.
 妊婦の感染により小頭症の新生児が生まれることが問題になったZIKAウイルス。今回、ZIKAウイルスの感染により、マウスの多発性硬化症(実験モデルEAE)の症状が悪化することがわかった。ZIKAウイルスの感染により中枢の血液脳関門を形成するアストロサイトの中でTRAF6シグナル伝達経路が活性化し、ケモカインCCL2, 7, 8が産生される。その濃度勾配に従ってCCR2を発現するTh17細胞が中枢に遊走することが増悪の原因であることが示唆された。


小坂聡太郎:Secretory leukocyte protease inhibitor ameliorates murine experimental colitis by protecting the intestinal epithelial barrier.
 腸管の上皮バリアの損傷は腸炎の原因の1つである。腸上皮細胞がLPSの刺激を受けるとSLPIというプロテアーゼ阻害因子が産生されることを見出した。SLPIを欠損するマウスでは、実験的腸炎の病態が悪化することがわかった。SLPIは炎症によって誘導される好中球からのエラスターゼとよばれる酵素の活性を抑制し、過剰な炎症による上皮バリアの破壊を抑制していることが示唆された。薬理学的にエラスターゼの活性を抑えても、腸炎の増悪化は抑えられることも示され、炎症性腸疾患の新たな治療戦略が期待される。


佐知望美:Physiological function of chemokine CCL20 and its receptor CCR6 in multiple sclerosis in mice.
 多発性硬化症は、炎症性のヘルパーT細胞、Th17細胞が中枢の中に遊走して発症する。この遊走にはケモカイン(CCL)とその受容体(CCR)が重要な役割を果たしていると言われている。今回、Th17細胞に発現するCCR6とそのリガンドCCL20の多発性硬化症における役割を明らかにするため、それぞれの遺伝子欠損マウスを作製して、実験的に多発性硬化症を誘導した。予想に反して多発性硬化症が両遺伝子欠損マウスにおいて野生型マウスと同様に誘導され、中枢にはTh17細胞と制御性T細胞が正常に観察された。


有木晋平:Identification of pathogenic Th17 cells in gastrointestinal tract using chemokine receptor deficient mice.
 ケモカイン受容体CCR2あるいはCCR6を欠損したマウスに実験的腸炎を誘導すると、病態は悪化するが、CCR2とCCR6を同時に欠損したマウスでは、逆に症状が緩和することが明らかになった。CCR2とCCR6を同時に細胞表面に発現するTh17細胞が腸炎の悪化に関係する病原性のT細胞であることが示唆された。


 Thanyakorn Chalalai:Physiological relevance of TRAF6 signaling in dendritic cells in controlling C. rodentium infection
  TRAF6はToll様受容体のシグナルを伝達する分子である。感染性腸炎における樹状細胞内のTRAF6シグナルの役割を明らかにするため、樹状細胞特異的TRAF6欠損マウスにC. rodentiumを感染させ腸炎を解析した。変異マウスでは、菌数の増加と腸炎の増悪がみられた。

ナンさんはFIMSA Travel Awardsを受賞

吉村昭彦大会長を囲んで記念撮影

チュラロンコン大学での研究成果を発表

山内くんとの再会

吉賀くん、高木(有木)さん、吉村先生と乾杯!

恩師の渡邊武先生との再会


夜の懇親会では、途中から理研の小安重夫先生、阪大の茂呂和世先生をゲストとしてお招きしました。人事交流!学術融合!楽しいひと時を過ごしました。