1.理念
  本学部は最新の学術を教授・研究し,高度の医学及び看護学の知識と技術並びにそれらの本義を見失わない道徳観と,それを支える豊かな教養を身につけた医療人及び研究者を育成し,もって医学及び看護学の進歩,国民健康の維持増進,さらに医療・保健を中心に地域及び国際社会の福祉に貢献する。
  また,「患者本位の最良の医療」を基本理念とし,高度先進医療の開発と提供及び倫理観豊かな医療人の育成により地域社会の医療・福祉の向上に貢献する。

2.目的
(1)教育
 医学科
   患者の立場を理解した全人的医療ができるよう,豊かな教養と人間性,高度の学識,生涯学習能力,国際的視野を備えた人材を育成することを目的として実践的な医学教育を行う。

 看護学科
   人々が心身共に健康な生活を営めるよう,適切な看護を行うことができる専門的知識と技術の修得を促し,看護学の発展と保健・医療・福祉の向上,ひいては国際社会への貢献ができるよう,豊かな人間性を備えた人材を育成する。

 医学系研究科博士課程
   医学研究者育成を主眼とし,それぞれの専攻分野について自立した研究者として活動を行うために必要な高度の研究能力とその基礎となる豊かな学識を養う。さらに,生命科学や医療・福祉などの広領域において,関連する他の研究科との連携を強化する。

 医学系研究科修士課程
   医療全般にわたって広い視野と高い見識を持ち,優れた指導力を持った教育者,研究者及び国際社会に貢献できる人材を育成する。

(2)研究
 医学科
   社会の医学・医療に対する多様な要望に応えるため,生命現象の基礎的研究,並びに健康の維持・増進,疾病の治療,克服に寄与する独創的,先導的研究を学内の他領域との連携で推進する。
  さらに,予防医学の重要性に鑑み,保健・衛生分野の研究を促進する。もって,これらの成果を地域並びに国際社会に還元し,保健・医療・福祉の向上に貢献する。

 看護学科
   多様で複雑な国民のヘルスニーズに応え,人々が心身共に健康な生活を営めるよう,適切な看護を行うために,その基盤となる看護知識・技術や理論の検証と開発を推進する。
   また,実践科学としての立場より,人々とその生活に視点をあてた研究を促進し,専門的な看護実践に資することをねらいとする。もって,看護学の発展と地域住民の保健・医療・福祉の向上,ひいては国際社会へ貢献する。

3.運営の総括と将来の展望
  大分医科大学として創設されて以来、平成20年度に30年が経過した。この間、大分県における国立の医科大学として、教育研究及び診療を通じて地域社会に大きく貢献してきたが、特にこの7年間は激動の季節であった。平成15年10月に旧大分大学との統合、平成16年4月に国立大学法人化と新医師臨床研修制度導入という三つの制度変更がほぼ時期を同じくして行なわれためで、それに伴い光と影が交錯した。
 光の部分の機構改革としては、平成15年度に総合科学研究支援センター、平成17年度に大分大学先端医工学研究センター、医学教育センターが発足し、いずれも一人ずつの専任教授が認められたこと(ただし総合科学研究支援センター、先端医工学研究センターの教員は大分大学本部職員として転出)、平成18年度から創薬育薬医学講座、平成19年度から臨床腫瘍医学講座という二つの寄付講座が設置されたことである。
 影の部分については、運営交付金配分(マネー)の減少と人員(マンパワー)の減少が大きな変化であった。各講座に配分される教育研究のための基盤的予算の総額(寄附金、科学研究費補助金等の外部資金・競争的資金を除いたもの)については、平成19年度は、平成13年度に比し、医学部と附属病院をあわせ2.67億円から1.49億円へと約1.18億円の減額となり、平成20年度以降も効率化係数および調整率のために、さらに減少傾向となっている。人員については新人の医師のみならず(資料1参照)、平成14年度から第10次定員削減に備え、19人を学長裁量定員として拠出した。さらに、平成18年度から、効率化係数に関わる定員および学長裁量定員拠出による教員数の削減により、平成19年度は、平成13年度に比し、医学部全体で17人(うち8人は総合科学研究支援センター及び保健管理センターが全学組織に移行したことに伴う減)の教員の定員減少となっている。第9次までの定員削減により、講座配置の事務職員も次第に削減され、非常勤職員の雇用へと傾斜し、平成19年度には共通経費の部分負担による非常勤事務職員の配置は中止された。加えて統合を契機として、挾間地区の事務職員が、23名削減された。
 このような中で、平成20年度5月現在の学部および大学を運営するための委員会数とその構成員数は、医学部 48(560委員)、附属病院 57(618委員)、全学 59(150委員、いずれも技術職員、事務職員を除く)である。これは平成13年度のそれ(医学部 50(547委員)、附属病院 49(532委員)) に比し、増加している。
 学部運営については、大分医科大学時代は、学長と教育研究及び厚生補導担当、医療担当の副学長各1人と平成14年2月から2人の学長補佐体制であったが、医学部となって以降は、学部長と各々教務、就職を担当する医学科長、看護学科長に加えて、平成16年4月から、教育担当、研究担当、社会貢献担当副学部長が各1名ずつ置かれることとなった。
 学部内制度としては、平成13年度から助手(平成19年度から助教)が任期制へ移行した。平成14年度から医学科は8大講座制(腫瘍病態制御講座、循環病態制御講座、脳・神経機能統御講座、免疫アレルギー統御講座、生体分子構造機能制御講座、薬効薬物動態治療応用講座、感染分子病態制御講座、人間環境・社会医学講座)に移行し、附属施設の実験実習機器センター、動物実験施設及びRI実験施設は平成15年度から総合科学研究支援センターに統合された。8大講座は平成20年6月末で解消され、以前の講座制へ復帰した。
 以上のような状況で、今後大分大学医学部を維持発展させていくには、
1) マネジメント能力の高い人材の採用・活用
2)運営組織のスリム化、事務職員・技術職員の増員・スキルアップによる教員の負担軽減
3)教員同士あるいは教員と事務職員・技術職員同士のチームワークの強化などが必要と考える。また短期・中期的評価も必要であるが、長期的視野に立った研究・教育も必要であり、リーダーはその見極めと、構成員は理想や夢を見失わない姿勢も大切である。特に運営の効率化を考えるあまり、研究・教育・医療に携わる構成員が、市場原理の精神に蝕まれていくことは避けなければならない。さらに医学部運営にあたっては、理事、部門会議のラインと学部長ラインとの意思疎通を計ることも重要である。平成22年度から始まる次期の中期目標策定には、上記の運営上のハンディキャップを認識し、かつ我が医学部のコアミッションを把握した上で、長期的視野に立ち、戦略を練る必要があると考える。

資料1-1

 
  


  医学部の理念と目的

     1.理念
     2.目的
     3.運営の総括と将来の展望
  施設設備
  国際交流
  社会的貢献
  管理運営・財政
  自己点検・評価体制