1.学術交流協定

(1)ドミニカ共和国
現状の点検
 ドミニカ共和国との学術交流・技術協力に関する審議は医学部国際交流委員会の下部委員会であるドミニカ関係小委員会が行っている。主な審議事項は医学教育プロジェクトに関するものであったが,平成16年10月でプロジェクトが終了したため,現在は審議事項がない。
 ドミニカ共和国との学術交流協定は平成元年にサントドミンゴ自治大学,平成8年にルイス・エドワルド・アンバール病院(現ルイスアイバール保健衛生都市)と締結している。サントドミンゴ自治大学からは平成15年〜17年に国費留学生1名が医学科修士課程に入学し,平成17年から博士課程に進学した。ルイス・エドワルド・アンバール病院とは国際協力事業団が行う技術協力に関するもので,本学が中心になって技術支援を行っている。

現状の評価
 サントドミンゴ自治大学からの留学生は現在まで1名に留まっている。科学研究費等による共同研究や個人レベルでの交流は行われているが,全学的学術交流には至っていない。ただし国際協力事業団による技術指導は活発に行われている。

将来の改善改革に向けた方策
 本学の国際協力事業団による技術協力は平成2年から継続的に続けられており,ドミニカ共和国における本学の知名度は高く非常に好感を持って受け入れられている。サントドミンゴ自治大学との個人レベルでの交流はあり,本学に対する期待も大きい。地理的なハンディーはあるものの,共同研究体制はできており,今後大学として一層の学術交流を推進する必要がある。

(2)中華人民共和国
現状の点検
 中国との学術交流等の審議は医学部国際交流委員会の下部委員会である中国関係小委員会で行っている。協定校への訪問計画,協定校からの研究員・訪問団の受け入れ計画を審議し,その結果を医学部国際交流委員会へ付議している。
 協定校のうち,中国人民解放軍軍医進修学院(北京市)および河北医科大学(石家荘市)とは平成4年に学術交流協定を締結して以来,協定の更新を行い現在に至っている。本学から協定校への派遣は平成13年度(4名),14年度(3名),16年度(4名)に行われ,表敬訪問,学術交流打合せ,特別講演等を行った。その後医学部国際交流委員会において学術交流推進策の見直しが行われ(平成17年),本学からの表敬訪問を止め,実効性のある交流推進を行うことが国際交流委員会で決まり,平成19年に河北医科大学との間で「東アジアにおけるヘリコバクター・ピロリ感染と胃癌研究の拠点形成」(代表 藤岡理事)に関する共同研究の覚書を締結した。
 河北医科大学からの本学訪問は平成15年度(SARS発生年)・17年以外は毎年行われている。人民解放軍軍医進修学院からの訪問は平成14年度以降ない。
協定校からの外国人客員研究員の受入れについては,河北医科大学からは毎年1名,民解放軍軍医進修学院からは平成16,19年度以外毎年1名受入れている。平成13〜19年度まで合計12名を6か月間受入れている.平成15,18年度には看護学科が受入れを担当した.研究者受入れについては中国関係小委員会で審議し,医学部国際交流委員会での了承の後,教授会に付議している。経費は医学部国際交流基金から支出している。
 資料3-1

現状の評価および将来の改善改革に向けた方策
 河北医科大学との学術交流は毎年行われている。本学からの表敬訪問を中止し,新たに共同研究に関する調印が行われたことは評価できる。ヘリコバクター・ピロリに関する研究以外の分野においても協定校を訪問し情報交換するための若手の研究者派遣を考えてもよいのではないか。学術交流は両者の学術研究の向上に資するためのものであり,今後とも一層の交流の内容,研究・教育の充実について努力する必要がある。
軍医進修学院の研究者は軍人であるため,学術交流が必ずしも安定的に行われる環境にないことが考えられる。
 全学の協定校である華中科技大学(医学部あり)が平成16年に本学を訪問した際,医学部長を表敬し医学部とも交流したい旨が伝えられている。交流資金の確保と共に今後の検討課題である。

(3)フィリピン
現状の点検
 フィリピンとの学術交流は当初「フィリピン関係小委員会」で審議されていたが,平成18年にフィリピン以外の海外学生研修の支援も視野に入れ,「海外学生研修小委員会」と名称を変更した。フィリピンのサンラザロ病院とは平成13年に学術交流協定を締結した。日本国内では見ることが少ない熱帯感染症を医学部学生がベッドサイドで研修することを主な目的として締結され,平成18年には大学間協定に拡大した.毎年4年次生約10名を募集し2週間研修を行っており,教員・事務職員4名が引率している。これは授業の一環として行われている。平成19年度から看護学科の学生(2名)も研修に参加している.学生の人選は海外学生研修小委員会および教務委員会の合同で書類および面接(英語能力を含む)で行い決定している。平成14〜19年までに学生57名,引率教職員31名がサンラザロ病院を訪問している。
学生の海外研修に伴う危機管理の観点から,平成17年に「危機管理対応マニュアル」を策定した。
 サンラザロ病院側の院長,研修部門担当者を本学に招聘し研修の説明会および講演会を開催している.教職員および招聘に係る経費は国際交流委員会の承認を経たのち教授会に付議し医学部国際交流基金から支出している。
 資料3-2

 共同研究として,平成14〜15年に微生物学講座が科学研究費による共同研究「ヒト抗デングウイルス単クローン性感染防御抗体の作製」を行った。
  平成18年度にこれまでの実績を基礎に西園教授グループが文部科学省に申請した「大学教員の国際化推進プログラム(海外先進教育実践支援)」が採択された.これを機に国際学術交流の一層の強化のため大学間協定に拡大し,平成19年度には新たにセントルーカス病院との学術交流協定を締結した.このことから学生の研修の幅が広がるとともに,共同研究としての「東アジアにおけるヘリコバクター・ピロリ感染と胃癌研究の拠点形成」におけるフィリピン国の代表とし,今後の臨床共同研究を推進することになった。

現状の評価および将来の改善改革に向けた方策
学術交流基金は(財)仁心会からの寄付だけに依存しており,更に2%は学長裁量経費として差引かれている。新たな基金獲得が課題である。
サンラザロ病院研修に参加した学生の中には卒業後に熱帯医学の分野に進んだ者もいる。海外研修の効果の評価法について考える必要がある。

(4)韓国
現状の点検と評価,将来の改善に向けた方策
韓国の高麗大学とは平成16年に大学間協定を締結し,更に平成18年に県立長崎シーボルト大学との三者間で学術交流等に関する申し合わせを結び,毎年看護学分野での日韓合同カンファランスを開催している。平成19年は本学医学部においてカンファランスを開催した.本カンファランスに対し,医学部国際学術交流基金から助成を行っている。
現在のところ,看護学分野での国際カンファランスによる交流であるため,国際交流委員会の中に小委員会は設置していない。

(5)その他の国との国際交流
 平成16年に起きたスマトラ島沖地震・津波の被災地インドネシア共和国アチェ州に,アイルランガ大学の要請を受け,平成17年2月に6名からなる医療支援チームを派遣し医療支援および機材供与,アイルランガ大学での講義等を行った。
協定校以外を加えた本学部の外国人研究員・研修員および留学生の受入れ状況は次のようになっている。留学生の受け入れは毎年1桁に留まっており,そのうち国費留学生は毎年0〜3名である。国際交流を発展させるためにも国費留学生数の増加が必要である。
 資料3-3


2.国際協力等
(1)ドミニカ共和国
現状の点検
 ドミニカ共和国とは,昭和63年にルイス・エドワルド・アイバール病院内に国際協力事業団の無償資金援助により消化器センターを建設した時から始まり,平成元年に「消化器疾患研究・臨床プロジェクト」,更に平成10年に「ドミニカ共和国医学教育プロジェクト」,平成17年から「中米カリブ地域対象画像診断技術向上研修」(第三国研修)が開始されており,本学とは20年間の交流が続いている。この間,消化器センター,医学教育センター(CEMADOJA)の建設,機材の供与,技術協力などが行われた.医学教育プロジェクトでは平成13年〜16年までに放射線医学を中心に基礎・臨床の専門家(長期専門家15名,短期専門家29名以上)が技術指導を行い,また,外国人客員研修員として16名を本学に受け入れ研修を行った。中米カリブ地域対象画像診断技術向上研修では,近隣諸国からの研修生も受け入れて研修を行っている.平成17年〜19年の期間に本学から12名の放射線医学の専門家を派遣した。
 資料3-4

現状の評価
 ドミニカ共和国の政治的な不安定さから来る問題はあるものの,CEMADOJAに於ける画像診断の技術の向上とドミニカ国民への還元は大きい。本プロジェクトでは医師の他,看護師,技師,事務系職員までも含めた広範な技術指導が行われた。その結果病院の経営,管理運営面でも格段の改善が見られた。ドミニカ共和国における本学の評価は,国際協力事業団の「JICA協力功労賞」(平成15年)および元大分医科大学三舟副学長に対するドミニカ共和国ドウアルテ・サンチェス・メジャ国民栄誉賞の授与(平成18年)で評価できる。

将来の改善改革に向けた方策
 本プロジェクトは,国際協力事業団のドミニカ共和国プロジェクトとして遂行されており,国際協力事業団と本学との協議のうえ進められている。

(2)ベトナム社会主義共和国
 医学部として協定等を締結している大学等はないが,学術交流やボランティア活動が講座単位で行われていることから,ベトナムでの支援活動の連携化を検討するため,医学部国際交流委員会の下部委員会としてベトナム関係小委員会を設置した(平成16年).現在,小委員会としての審議事項はない.

現状の点検
1)口唇口蓋裂の無償手術の医療支援
 本学歯科口腔外科が日本口唇口蓋裂協会の活動に参加し,ベトナム南部のベンチェ省で,医師,麻酔医,看護師,学生などからなる医療班を作り,口唇口蓋裂の無償手術の医療支援を行っている.平成14〜19年の期間に30症例の手術と46例の全身麻酔を実施し,延べ21名の医師を派遣した。また,ベトナム,ラオスの医師の教育も行った。
 資料3-5

2)ベトナムにおける頭頚部がん治療及び音声機能リハビリテーション等医療支援
 本学耳鼻咽喉科学講座がNPO法人「日越医学友好交流会」の事業のひとつである「ベトナム社会主義共和国における頭頚部がん治療及び音声機能リハビリテーションを支援するボランティアの会」を平成10年から開始した.平成15年にはJICA小規模開発パートナーシップ事業「草の根技術協力事業」に選ばれている。ハノイ市,ホーチミン市及びフェ市の耳鼻咽喉科センターで喉頭がんなどの患者について喉頭の除去手術を行い,術後食道発声教室を開き発声法を指導,診療用と処置用の内視鏡を贈る活動を行っている。また,現地の医師を本学へ招聘し,手術研修などを行っている.平成13〜19年までの期間,医師(毎年1〜4名),音声技術指導者(平成16〜18,各1名)を派遣した。
 資料3-6

3)日本学術振興会による「拠点方式国際共同研究」および独立行政法人理化学研究所感染症研究ネットワーク支援センターによる「新興感染症研究拠点形成プログラム」(拠点大学は共に長崎大学)
 本学微生物学講座では,ハノイ国立衛生疫学研究所との共同研究で「ベトナムにおける狂犬病検査システムの構築と分子疫学的検討」,「ベトナムにおける組織培養狂犬病ワクチンの開発」のテーマで共同研究を行っている.狂犬病ウイルスの遺伝子解析を行い,論文として発表している.この制度によりベトナムから研究員を受入れ,診断技術の開発と現地での野外実施に関する研究も行っている。

現状の評価および将来の改善改革に向けた方策
 口唇口蓋裂の手術支援と指導に対し,平成16年にベンチェ省のカオ・タン・コン知事が来学し,大分大学医学部に感謝状が贈られた。また,喉頭がんの手術と食道発声の指導は患者の生活の質の向上に資するところが大きく,優良なプロジェクトとしてJICAの小規模パートナーシップ事業に採択され高い評価を得ている。また,狂犬病は発症した場合の致死率が100%と言われ,狂犬病感染動物の発見と優良なワクチン作成に向けた研究は費用対効果が高いものである。



3.国際学術交流に関する事業の推進に対する助成
現状の点検,評価および将来の改善改革に向けた方策
平成18年に「医学部国際学術交流に関する事業の推進に対する助成公募要項」を制定し,「医学部国際学術交流基金取扱要項」に基づき,医学部国際学術交流に関する事業の推進に対する助成の公募に関し必要な事項を定めている。対象となる事業は,@学部の交流協定校との学術交流事業,A大学間の交流協定校との学術交流事業,Bアジアとの学術交流事業,Cその他,医学部として必要と認める事業,としている。平成18年度は応募のあった2件,平成19年度は4件のうち2件を採択した.国際交流基金から支出できる額が限られており(30万円まで),新たな基金の獲得が課題である。







  
 

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