本院で同種造血細胞移植治療を受けられた患者さん・ご家族の皆様へ

~2020年7月1日から2023年5月31日までに血液内科で同種造血幹細胞移植を受けられた患者さんの血液検体の医学研究への使用のお願い~

【研究課題名】
Next(ネクスト) generation(ジェネレーション) sequencing(シーケンシング)を用いた同種造血細胞移植後の保存検体における感染症の検討

【研究の対象】
 この研究は以下の方を研究対象としています。
2020年7月1日~2023年5月31日までに当院で同種造血細胞移植治療を受けられた血液がんの方

【研究の目的・方法について】
白血病など、血液がんの治療法のひとつとして確立されている同種造血細胞移植は、大量の放射線や抗がん剤を行うことにより、患者さんの がん細胞だけでなく正常の白血球、赤血球などといった骨髄細胞をも破壊します。そのため、治療のための大量放射線や抗がん剤治療(前処置)開始から、ドナーさんの白血球が増えてくる生(せい)着(ちゃく)までのあいだ、患者さんは免疫力が低下し、感染に対してとても弱い状態にさらされます(易感染状態)。また、生着した後も免疫力の低下は持続し、さまざまなウイルス感染症の発症を引き起こすことがわかっています。また、感染の原因となるウイルスの種類により、治療方法は異なってきます。そのため、移植治療を行う患者さんにどのような病原体(ウイルス)がいるのかを特定することは、感染症の早期診断、早期治療につながり、患者さんの生命予後の延長につながると考えます。
現在、ウイルス感染症の確定診断法としてPCR検査が用いられていますが、PCR検査は既に判明しているウイルス感染症しか特定できません。近年その適応が急速に広がっているNext generation sequencing (NGS):次世代シーケンサー※では、検体中のDNAウイルスおよびRNAウイルスの塩基配列(遺伝情報)を網羅(もうら)的に解読することが可能であり、さらに遺伝子型や薬剤耐性と関連する遺伝子変異なども調べることが可能とされています。一方で、次世代シーケンサーは従来のPCR検査と比べ、時間がかかるといったデメリットもあります。本研究では過去に同種造血細胞移植を行った患者さんの血液保存検体を用いて、従来のPCR検査と次世代シーケンサーの両方を用いて病原体の評価を行います。そしてこれらの結果の比較を行うことで、感染症診断への次世代シーケンサーの有用性の評価や、感染症診断法としての位置付けを検討したいと考えています。また、次世代シーケンサーにより新たに病原性と関連する遺伝子型や薬剤耐性関連遺伝子の検出がなされれば、より感染症の治療に対して正確かつ効果的な治療指針を新たに提示できる可能性もあると考えています。
 ※次世代シーケンサーとは:DNAの塩基配列を解読する装置

研究期間:(医学部長実施許可日)~2028年3月31日

【使用させていただく試料・情報について】
 本院におきまして、既に同種造血細胞移植治療を受けられ「同種造血細胞移植後HHV-6再活性化とその関連疾患の検討」に参加された患者さんの血液検体(試料)を医学研究へ応用させていただきたいと思います。その際、血液検体を調べた結果と診療情報(例えば感染症を起こしていたかどうであったかなど)との関連性を調べるために、患者さんの診療記録も調べさせていただきます。
なお、本研究に患者さんの血液検体(試料)及び診療記録(情報)を使用させていただきますことについては、本学医学部倫理委員会において外部委員も交えて厳正に審査・承認され、大分大学医学部長の許可を得て実施しています。また、患者さんの試料および診療情報は、国の定めた「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に従い、特定の個人を識別できないよう加工したうえで管理しますので、患者さんのプライバシーは厳密に守られます。当然のことながら、個人情報保護法などの法律を遵守いたします。


【使用させていただく試料・情報の保存等について】
血液検体(試料)の保存は論文発表後5年間、診療情報については論文発表後10年間の保存を基本としており、保存期間終了後は、血液検体(試料)は焼却処分し、診療情報については、シュレッダーにて廃棄したり、パソコンなどに保存している電子データは復元できないように完全に削除します。ただし、研究の進展によってさらなる研究の必要性が生じた場合はそれぞれの保存期間を超えて保存させていただきます。

【外部への試料・情報の提供】
本研究で収集した試料・情報を他の機関へ提供することはありません。


【患者さんの費用負担等について】
本研究を実施するに当たって、患者さんの費用負担はありません。また、本研究の成果が将来診断法などの開発につながり、利益が生まれる可能性がありますが、万一、利益が生まれた場合、患者さんにはそれを請求することはできません。
 
【研究資金】
 本研究においては,公的な資金である大分大学医学部腫瘍血液内科学講座の寄附金を用いて研究が行われます。

【利益相(りえきそう)反(はん)について】
 この研究は,上記の公的な資金を用いて行われ,特定の企業からの資金は一切用いません。「利益相反」とは,研究成果に影響するような利害関係を指し,金銭および個人の関係を含みますが,本研究ではこの「利益相反(資金提供者の意向が研究に影響すること)」は発生しません。

【研究の参加等について】
本研究へ試料および診療情報を提供するかしないかは患者さんご自身の自由です。従いまして、本研究に試料・診療情報を使用してほしくない場合は、遠慮なくお知らせ下さい。その場合は、患者さんの試料・診療情報は研究対象から除外いたします。また、ご協力いただけない場合でも、患者さんの不利益になることは一切ありません。なお、これらの研究成果は学術論文として発表することになりますが、発表後に参加拒否を表明された場合、すでに発表した論文を取り下げることはいたしません。
患者さんの試料・診療情報を使用してほしくない場合、その他、本研究に関して質問などがありましたら、主治医または以下の照会先・連絡先までお申し出下さい。
                   
【研究組織】
          所属・職名          氏名
研究責任者 
大分大学医学部腫瘍血液内科学講座 教授     緒方 正男
研究分担者 
大分大学医学部微生物学講座    教授     西園 晃
大分大学医学部腫瘍血液内科学講座 病院特任助教 河野 利恵
大分大学医学部附属病院 輸血部  講師     高野 久仁子
大分大学医学部微生物学講座    講師     八尋 隆明
大分大学医学部微生物学講座    大学院生   麻生 優花


【お問い合わせについて】
本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申し出下さい。

照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先:
住 所:〒879-5593 大分県由布市挾間町医大ヶ丘1-1
  電 話:097-586-6275
 担当者:大分大学医学部 腫瘍・血液内科学講座 教授 緒方 正男(おがた まさお)

2023年08月25日