
令和5年度
令和5年度
老年看護の歴史は、看護の歴史や社会の変化と関連して発展してきました。人口の少子高齢化、医療の高度化・専門化、さらに人口減少社会、多死社会を背景に、多くの人々が“いかに人間としての尊厳を保ちながら健康な人生・生活を全うすることができるか”について関心を高めています。また、老年看護の場は、地域包括ケアシステムの構築、共生社会の実現に向けて、病院から地域・在宅へと拡大しており、多機関・多職種との連携が重視されています。
様々な場で、様々な健康レベルにある高齢者とその家族にかかわる看護専門職には、高い自律性、専門性、協調性等の実践能力に加え、高齢者から学ぶ姿勢や自己の倫理観を洞察する力が求められます。
本学の老年看護学Gerontological Nursingでは、老年期にある人を“固有の歴史を携え、いまをこれからを生きる全体的存在”としてとらえます。そして、看護学Nursingと老年学Gerontologyの知識を基盤に、高齢者一人一人が健やかに、よりよく生きる・生活できるよう、我々看護専門職はどのように支援すればよいのかを探究します。
老年看護とは、高齢者(家族も含める)が、健康を維持・回復・増進し、その人らしくよりよく生きる・生活できるよう支援することである。高齢者がよりよく生きる・生活できるとは、心身の加齢変化がすすむ中で、もてる力(環境に適応する力、自律・自立する力、自己実現する力等)を発揮し、社会の中で主体的な暮らしを続けることである。
看護専門職は、高齢者の歩んできた人生を受けとめ、加齢に伴う健康問題・課題を客観的にとらえる中で、その人にとってよりよく生きる・生活するとはどのようなことなのかを高齢者と共に考え、高齢者自身が望ましい状態に変化できるようその人の生活にかかわりながら支援する。
老年看護学は、老年看護の現象・事象を客観的にみつめ、その中に在る原理を探究する学問である。この探究を通して、老年看護実践の基盤となる理論や合理的な看護方法論が老年看護の知識として体系化される。
老年看護学の対象は、老年看護の現象・事象である。その現象・事象を探究する際には、諸科学を基盤にした看護学と老年学の知識体系が活用される。また、老年看護学の知識体系は、看護学と老年学にも還元され、各学問の発展に貢献する。
本学科の教育目標を受け、老年看護学のカリキュラムにおいては、以下を卒業時の到達目標としています。
(授業のねらい)
本科目は、老年看護学の学習過程における導入として位置づけられ、今後の老年看護学の学習に方向づけを与えるものである。ここでは、老年期を生きる人々(高齢者)とその家族に対して個別的看護を展開するために最も基礎となる知識『老年看護の原理』、『高齢者の生活像』を学修することを通じて、老年看護実践能力の基盤を形成する。
(学習目標〕
(授業のねらい)
本科目では、高齢者に特有の健康問題に焦点を合わせる。高齢者の健康問題は、心身機能・構造の加齢変化を基盤に、疾病、治療、環境、生活習慣など多様な要因の影響を受けるため、個別的で複雑な構造をもつ。したがって、老年看護実践においては、多角的に観察し情報を得ながら高齢者個々に生じている健康問題を全体的にとらえ、看護ニーズを判断することが求められる。
ここでは、高齢者に生じやすい12の健康問題について、それらの定義、発生要因・機序、看護の原則を理解することによって、健康問題を抱える高齢者に個別的看護を提供するためのアセスメント能力を養う。
(学習目標)
高齢者に生じやすい12の健康問題(下記参照)について、定義、発生要因・機序および看護の原則を説明する。
(授業のねらい)
近年、少子高齢化の進展とともに高齢者の暮らしが多様化する中で、医療・保健・福祉・介護・権利擁護にかかる制度の変革は目覚しい。こうした日本社会において、看護専門職には、「高齢者とその家族が社会資源を有効に活用できるよう支援する」と同時に、「地域のケアシステムを創出・開発する」役割が求められる。
本科目では、高齢者とその家族が、地域社会の中で、健康に安心して暮らし続けられるよう看護を提供するための知識として、高齢者の生活に関連する年金・医療・保健・福祉・介護・権利擁護に関する制度の変遷、現行制度のしくみと課題、インフォーマルサポートについて学修する。
(学習目標)(授業のねらい)
本科目では、高齢者とその家族が、地域社会の中で健康にその人らしく生活できるよう個別的な看護を展開するための基礎的能力を養う。
既習の「老年看護学概論」「老年看護方法論Ⅰ」「高齢者支援システム論」、関連諸科学・看護学の知識および基礎看護学実習での看護実践経験を統合し、高齢者・家族に対する看護実践ののプロセスと適用される看護技術の原理原則を探究する。
(学習目標)
(授業のねらい)
老年看護学および関連諸科学の講義・演習で学んだ知識を基盤として、高齢者が健康を維持・回復・増進し、その人らしくよりよく生き・生活できるよう個別的看護を展開するための基礎的能力を養う。
(学習目標)
(実習方法)
(授業のねらい)
全ての看護学領域および関連諸科学の授業で学んだ知識を基盤として、在宅療養者が望む住まいでその人らしく健やかに療養生活を続けられるよう、地域包括ケアシステムにおいて個別的看護を展開するための基礎的能力を養う。
(学習目標)
(授業のねらい)
在宅看護論をはじめ全ての看護学領域および関連諸科学の講義・演習で学んだ知識を基盤として、在宅療養者が望む自宅等において、健康の維持・回復、安らかな死を支え、その人らしい生活が続けられるよう個別的看護を展開するための基礎的能力を養う。
(学習目標)
(実習方法)
(授業のねらい)
リハビリテーションRehabilitationの語源は、ラテン語の「再び適したふさわしい状態にする」であり、一般的に理解されている「訓練」「機能回復」という意味ではない。医療・保健・福祉におけるリハビリテーションは、クライアント(障害者)が社会の中で、その人がもつ能力を発揮できることにその目標がおかれる。
本科目では、地域リハビリテーション、地域共生社会の実現に向け看護が取り組むべき課題に目を向け、リハビリテーション看護の概念に対する理解を深める。また、学生が培ってきた看護観、人間観をさらに深め、視野を拡げる機会とする。
(学習目標)