[発行] 大分大学医学部附属病院広報誌発行委員会
腎移植の現況

 

 腎移植は末期腎不全に対する最も優れた治療法です。我が国では生体腎移植は900例を超えたものの、提供者(ドナー)不足のため献腎移植は年間わずか200例程であり、他の先進諸国と比較して腎移植件数が際立って少なく、今後ドナー不足の解消は極めて重要な課題です。一方で我が国の移植腎生着率は高く、日本の移植医療は世界的に極めて高い水準にあります。ここでは最新の生体腎移植の話題をいくつかご紹介します。
 慢性腎不全の透析治療が長期化すれば様々な合併症が進行するため、現在では可能な限り早期の腎移植が推奨されています。そのため末期腎不全に至れば透析治療を経ずに最初から腎移植を選択することが可能であり、最近は腎移植を第一選択とする患者さんが増加しています。高齢者でも70歳以下で合併症がなければ、ドナーあるいは腎受給者(レシピエント)となることが可能です。また、生体腎移植は親子間での移植が大半を占めていましたが、最近の傾向として夫から妻、あるいは妻から夫への夫婦間移植の割合が増加しています。夫婦間移植の場合、献腎移植で重視されているHLAと呼ばれる組織適合性は全く一致しないことが多いにも関わらず、最近の免疫抑制療法の進歩等により移植腎生着率は親子間移植に匹敵します。かつてドナーとレシピエントのABO血液型が適合していない腎移植は困難でしたが、血液型不適合移植における拒絶反応の機序が解明されるに従い、現在ではその治療法もほぼ確立し、血液型が一致する場合とほぼ同等の移植腎生着率が得られています。さらに、生体腎ドナーは従来腎摘出のため側腹部に30−40cmの切開が必要でしたが、最近では腹腔鏡手術の応用によって7cm程の切開で手術が可能になりました。
 本院は大分県内では唯一の移植施設として1989年から生体および献腎移植を行ってきました。現在本院泌尿器科では腎移植認定医を配し、またドナーの腎摘出術は腹腔鏡手術のエキスパートが行っています。慢性腎臓病で透析が必要と診断された患者さんや、すでに透析を受けている患者さんで、腎移植についてご相談のある方は本院泌尿器科受診をお勧めします。

 

(文責 泌尿器科 佐藤 文憲)

 

 

最終更新日時: 大分大学医学・病院事務部管理課作成