[発行] 大分大学医学部附属病院広報誌発行委員会

「軌道に乗ったステントグラフト治療
      真のチーム医療がここに」

 

 
 新しい時代が来た!そう確信したのは本年2月にステントグラフト治療を初めて行った胸部大動脈瘤患者さんの退院前のコンピューター断層写真を見たときでした。通常は大動脈瘤手術は胸かお腹を大きく開いて行われます。ほとんどの方はその大きな手術を乗り越え元気に帰られていますが、やはり回復まで時間がかかっていましたし、時にはお年寄りや肺の弱い方などで治療を断念せざるを得ないこともありました。
ステントグラフトとは人工血管の内側に小さくたためるバネ状の金属を縫い付けたものです。それを太ももの動脈からカテーテルに詰め込んで動脈瘤まで運び、そこで再び開いて留置しますと、ふたをされた動脈瘤は血の塊(血栓)で充満しもう破裂しなくなります。この方法ですと身体への負担が格段に少なくて済みます。
 これまで22人の方にこの治療を行い、破裂のため緊急に治療を行なった患者さんお一人が残念ながらお亡くなりになりましたが、その他の方々はお元気に退院なさっています。入院期間は10日から2週間です。この治療は心臓血管外科と放射線科がチームを組んで行っています。いえ実はそうではありません。麻酔科医師、放射線技師、手術部、病棟の看護師もそれぞれの立場で創意工夫をし、この新しい治療を成功させるべく、治療をお受けになる患者さんも含めまさに一丸となって取り組んでいます。最先端の治療に携わっているという気持ちからでしょうか、今回は特にスタッフの目の輝きが違うように感じます。
 この治療法をはじめ心臓血管外科領域の治療方針決定は一般の医療機関ではまずできません。そこで当科ではかかりつけの先生からの要請で専門知識を持った当科医師がその医療機関へ出向き、主治医の先生とご本人、ご家族も交えて話し合いをするという「訪問カンファレンス」というものを行っております。このシステムも徐々に浸透し、訪問する機会も増えてきました。当科関連疾患を診断された場合には是非ご利用下さい。

 

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(文責 心臓血管外科 宮本 伸二)

最終更新日時: 大分大学医学・病院事務部管理課作成