研究室配属 Research Training

 ◆2014年の研究室配属


 今年は、岩中さんと鹿子嶋くんが研究室にやって来ました。さらに、中国の河北医科大学からLiさんが短期留学生として感染予防医学講座に参加します。岩中さんは、改良型RT-LAMP法を用いて蚊が媒介するウイルス感染症の診断法を研究します。鹿子嶋くんは当研究室で開発したレポーターマウス(光るねずみ)の評価をIVISとFACSという最新鋭の装置で評価します。
  Good Luck! ヽ(‘ ∇‘ )ノ
配属学生 氏名 研究テーマ コメント

 1141010 岩中 愛
● 改良型RT-LAMP試薬を用いたアルボウイルス症診断法の確立   指導教員:江下、福田、小林

 チクングニア熱はチクングニアウイルス(CHIKV)に感染したネッタイシマカやヒトスジシマカがヒトを吸血することで発症する感染症である。チクングニア熱の国内への輸入症例として2014年7月現在、6名報告されている。ヒトスジシマカは九州・本州に広く生息しているので、輸入症例の患者からヒトスジシマカを介してチクングニア熱が国内に広がる可能性が懸念されている。本研究では、CHIKVを検査材料入手後1時間程度で判定できる液体試薬を用いる従来のRT-LAMP法をもとに、乾燥試薬を用いる改良型RT-LAMP法を開発し、その有用性を従来のRT-LAMP法やRT-PCR法と比較検討した。人工感染血液中のCHIKVを液体RT-LAMP法と乾燥RT-LAMP法で検出したところ、両者とも同程度の検出感度を示した。さらに、乾燥RT-LAMP法の方が陰性と陽性の区別がはっきりしていた。 RT-PCR法と比べRT-LAMP法はRNA精製の手間を省くことができるので、労力と時間を節約できる。さらに、試薬を乾燥化させたことにより、感染流行地へ検査キットを容易に運ぶことができる。

技術:蚊の取り扱い、RT-LAMP法、RT-PCR法

【感想】実験の手技が全く身についていない状態からのスタートで不安でしたが、忙しい中熱心に指導してくださいる江下先生、福田先生に助けられ研究が考察の段階まで到達することができました。研究とはどのように進めていくのか、また研究を行う際の心構えなど、将来研究を行う上で、とても大事なことを教えていただきました。江下先生を始め、感染予防医学講座の皆様には大変お世話になりました。ありがとうございました。

【教授コメント】アルボウイルスを迅速にかつ簡便に診断できる方法の確立は重要です。この年は、代々木公園で70年ぶりにデング熱国内感染者が表れ騒動になりました。臨床現場でデングウイルス検出イムノクロマトキットが不足しました。地道な研究の成果が、将来多くの人々を助けることにつながると信じています。

 1141023 鹿子嶋 洋明

● BioluminescenceとBiofluorescenceを用いたCre-loxPシステムの検証  指導教員:小林

 バクテリオファージP1由来のloxP配列は組換え酵素Creによって触媒され遺伝子組換え反応をおこす。これをマウスに導入した遺伝子組換えマウスは、組織特異的に標的遺伝子を組換えるのに応用されている(Cre-loxPシステム)。当研究室では、Venusという蛍光タンパク質とウミシイタケ由来の発光タンパク質Renilla luciferase遺伝子を組み込んだ蛍光・発光loxPレポーターマウス(Nano-Lanternマウス)を開発した。このマウスを各種Creマウスと交配し、臓器特異的遺伝子組換えを蛍光と発光を指標に評価した。蛍光タンパク質の発現は、Flow cytometory法(FACS BD Fortessa X-20)を用いて、発光タンパク質の発現は、IVISを用いて評価した。Nano-LanternマウスをTie2Creマウス、CD19Creマウス、CD4CreマウスおよびCD11cCreマウスと交配し、得られた子孫マウスを遺伝子検定した後、尾静脈から発光基質を投与して生体における発光をIVISで観察した。その後、脾臓の免疫細胞における蛍光をFACSで解析した。Tie2は血球細胞全般で、CD19はB細胞で、CD4はT細胞で、CD11cは樹状細胞で発現する分子である。IVISによる観察では、Tie2CreNLマウスは全身が光っており、CD19CreNLマウスは脾臓と顎下腺が光っていた。CD4CreNLマウスは胸腺の発光が確認され、CD11cCreNLマウスは体全体に薄い発光が認められた。Flow cytometoryにより、想定された細胞系列での発現が確認されたが、一部想定外の発現もみられた。

技術:IVIS法、Flow cytometory法、マウスの取り扱い

【感想】 研究室配属が始まるまで、自分が行う実験の基礎であるCre-loxPシステムを全く知らず、今までの実習でもあまり実験器具を使ってこなかったので、研究がうまくいくか非常に不安でしたが、始まってみると小林先生をはじめいろいろな方々が僕に様々なことを教えてくれて、大変勉強になりました。講座への留学生の方々ともとても仲良くなることもできて、本当に楽しく充実した研究室配属でした。二か月と短い期間でしたが、この二か月でたくさんのことを教えていただき、医師になってからも今回の経験をもとに頑張っていきたいと思います。本当にありがとうございました。

【教授コメント】鹿子嶋くんは、研究室ではバカなことばっかり言って、場を和ませるムードメーカー。しかし、中身はしっかりしていて、実験原理の理解が早く、手先も器用で実験手技も素早くマスターしました。マウスの尾静脈への投与はとっても難しいのに、何回か練習して、すっかりものにしてしまったのには驚きました。

 河北医科大学 Li Yan



 2014年より、研究室配属の時期に、中国河北医科大学から交換留学生として数名の学生が 大分大学医学部に短期間留学することになりました。今年は第1回目で、9月中旬からの参加なのでLiさんに独立したテーマはありませんが、本学の学生と一緒に研究室配属を体験して医学研究の面白さと重要性を学んでもらいます。

 

【教授コメント】Liさんは、中国河北医科大学からやってきました。物腰柔らかでも研究は熱心です。

         
     
 
  鹿子嶋くんとは言葉は通じないけど、心は通じる。        岩中さん、ポスターの前でピース!
 
           授賞式  

        実行委員のメンバー おつかれさま