研究室配属 Research Training

 ◆2017年の研究室配属


 8月21日より、研究室配属が始まりました。今年は、4名の配属学生が研究に取り組みます。峯さんはすでに先行配属して腸炎の研究テーマに取り組んでいます。山村君はトキソプラズマ脳炎の研究、後藤亮君は抗炎症作用を有する脂質メディエーターの研究に取り組みます。山村君は製薬会社の研究員のキャリアがあるし、後藤君は高校がスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されていて研究の経験があります。レベル高そう。そして、2年ぶりに河北医科大学から留学生Wang Yinanさんが配属します。アルボウイルス診断法の開発に取り組みます。エンジョイ! ヽ(‘ ∇‘ )ノ
配属学生 氏名 研究テーマ コメント

 1441086 峯 陽子
● 腸内ペプチドCCL20とSLPIの発現制御機構と生理機能の解明
  指導教員:佐知、園田、小林

 本研究は炎症性腸疾患(IBD)の発症機構の解明と新規治療法の開発を目指し、腸内のケモカインCCL20と抗菌ペプチドSLPIについて、分子生物学的手法によりその発現機構を明らかにし、遺伝子欠損マウスの腸炎モデルによりその生理的機能を解明する。また、腸炎モデルマウスにrSLPIを投与して、その有効性を検討する。

技術:培養細胞への遺伝子導入実験、遺伝子発現解析(RT-PCR、Western Blot法)、動物実験(マウス病態モデル)、病理学的解析法



【一言】real time PCRマスターになります!
【感想】私は2ヶ月間の研究室配属期間の以前から実験を始めていたが、この2ヶ月間、毎日研究室に通い、実験やセミナーを行う毎日は、座学時々実習の今までと違い、とても新鮮だった。実験においては、思うような結果が出たものもあれば、そうでないものもあった。技術面は長く実験をしている分、他の同級生よりは実力はついていると思うものの、実際、私一人で実験をするとなった場合、おそらく時間もかかると思う上に、成功率もまだまだ低いと感じる。やはり、今回の配属期間は、先生方のおかげで形になったのだろう。自分が研究者としてやっていくにはまだまだ未熟である、と感じた2ヶ月であった。実験以外にも私が学んだことといえば、プレゼン方法である。伝えたいことを聞き手に伝えるための資料作りは想像以上に困難で、先生方からかなりアドバイスをいただいた。プレゼン時も、その資料をいかに有効に用いるかというのは難しく、練習は何回も行った。そのせいか、発表時は特に止まることなく、スムーズに進んだと思う。 研究室生活を終え、研究とは、続けることで、疑問を持ち、能動的に行動するものだ、と感じた。私は大学に入ってから特に能動的に勉強することがなく、受動的なことばかりであった。あれがしたい、という気持ちがわいてくることが新鮮で、とても有意義な2ヶ月間を過ごすことができた。最後になりますが、長い期間お世話になった、感染予防医学講座の先生方には本当にお世話になりました。この場を持ってお礼を申し上げます。
【教授コメント】 峯さんは、1年以上前から研究室で実験を始めました。明るい性格で研究室を盛り上げてくれました。 佐知さん、園田先生の指導で、PCRによるマウスの遺伝子型検定、炎症性サイトカインの測定、腸炎モデルの作製と病理解析、便潜血検査などいろんなことができるようになりました。研究が好きとのこと、将来大学院への進学も考えてください。

 1441038 後藤 亮
● 抗炎症作用を有する脂質メディエーターの解析
  指導教員:尾崎、小林

 近年、炎症の惹起・収束に関与する生理活性を有する脂質(脂質メディエーター)の多彩な機能が注目されている。当研究のこれまでの研究で明らかになった抗炎症作用を有する脂質メディエーターについて、炎症モデル動物における個体レベルでの効果を検討するとともに、作用機序を分子レベルで明らかにする。

技術:マウス免疫実験、ELISA法、フローサイトメトリー法、リアルタイムPCR法
【一言】今回の研究室配属は感染予防医学の小林先生をはじめ多くの方の協力及び、お忙しい中配属を引き受けくださった尾崎先生のおかげです。今週から研究室配属がはじまりまだまだ経験も浅くできることが少ないながら優しく1から様々なことを教えてくださり本当に感謝申し上げます。少しでも先生方の研究に貢献できるようにそして少しでも新しい何かを発見して基礎研究の面白さややりがいを吸収できるような2ヶ月間にしていきたいと思います。
【感想】今回2ヶ月という研究室配属期間は長いようで予想以上に短く結果はなかなか残せなかったと思う.細胞の培養や刺激には長い時間がかかり,またELISA法やWestern Blot法などの解析も多くの時間がかかる.研究は長い時間をかけて様々な可能性を模索しやっとのことで1つの結果を見出すものであると感じた.今回この2ヶ月かけがえのない体験をさせて頂き,配属にあたりお世話になった感染予防医学の小林隆志先生を始め多くの先生,特に実験に指導いただいた尾崎貴士先生には心より御礼申し上げる.この実験はまだ途中でありまだ様々な可能性を秘めている.そのためこれからも協力しOEAやPEAの可能性を最大限模索したい.
【教授コメント】 後藤くんは、高校で科学研究に取り組んだ経験があるだけあって、リサーチマインドをしっかり持った学生だと感じました。与えられたテーマについて、素早く背景と目的を理解し、自分自身で調べ考える姿勢は研究者の素質があるのでは、と思います。尾崎先生と夜遅くまで実験室で実験していた姿が印象的でした。また、休日はレクリエーションを企画し、中国から来たWangさんやタイから来たFaiさんをおもてなし。意外な一面を見ました。

  1441109 山村 悠介
● トキソプラズマ感染におけるアストロサイトの感染防御機構の解明
  指導教員:飛彈野、小林

 トキソプラズマ原虫は、HIV感染時や免疫抑制剤投与下にある免疫不全患者に脳炎を始めとする後天性トキソプラズマ症を引き起こす。トキソプラズマ脳炎の発症には、アストロサイトがその重篤化に重要であるが、その機序は明らかでない。本研究ではトキソプラズマ脳炎におけるアストロサイトのIFN-alpha非依存的な抗トキソプラズマ活性を誘導するシグナルを探索し、その作用機序を明らかにする。

技術:RT-PCR法,蛍光免疫染色法,遺伝子組換え技術,遺伝子導入法、マウス感染実験、ELISA法、細胞培養
【感想】約4か月弱に渡り感染予防医学講座の研究室に所属させてもらったが、有意義に過ごせたのは指導教官をはじめとする講座の先生方のおかげであり、感謝致します。特に実験に関わる消耗品の準備や試薬の準備に時間を割かれることが少なかったため、ストレスを感じることなく効率的に実験に取り組めたのが大きかった。実験データも予定通り取得でき、論文化するまでの時間はなかったが、今後は指導教官に任せたいと思う。最後に、本研究を遂行するにあたって、遺伝子改変トキソプラズマ原虫を供与して下さった大阪大学微生物病研究所教授 山本雅裕先生と本研究のコンセプトと多くの試薬を供与して下さった大分大学医学部環境・予防医学講座助教 城戸康年先生に感謝致します。
【教授コメント】山村くんは、学士編入学生で、すでに薬学部を卒業し製薬会社での研究歴もあるので、すでに研究のプロです。研究生活での時間の使い方に慣れていると感じました。将来、基礎と臨床の架け橋となってくれることを期待しています。

  Wang Yinan 王 依楠
● 改良型RT-LAMP法によるアルボウイルス感染の迅速簡便診断法の評価
  指導教員:神山、小林

 チクングニア熱はチクングニアウイルス(CHIKV)によって引き起こされる熱性疾患で、CHIKVに感染したヤブカによって媒介される。チクングニア熱は、2017年7月にバングラデシュの首都ダッカで大流行している。我々は先行研究により国内に広く生息しているヤブカ属のヒトスジシマカやヤマダシマカがCHIKVに感受性を有し、輸入症例の患者からチクングニア熱が国内に広がる可能性を示した。本研究では、CHIKVを検査材料入手後1時間程度で判定できる乾燥RT-LAMP法の有用性を従来のRT-LAMP法やRT-PCR法と比較検討する。 

技術:RT-LAMP、リアルタイムPCR、ウイルス実験、細胞培養、動物実験(ウイルス感染モデル)
【Comments】I hope LAMP can help more people to keep away from all of the viruses.
【Impressions】I was lucky to be able to study experiment in Japan from China for two months. During this time, I not only learned a lot of knowledge, but also learned a precise scientific attitude. Therefore, I want to thanks my teachers professors Kamiyama and Kobayashi for teaching me knowledge, and thanks all of the members for looking after and helping me. I will remember this happy experience in my heart. Thank you all once again.
【Comments by Prof】Wang-san is from Hebei Medical University. This is her first time traveling abroad, but she is having a positive impression of Oita University and its teachers and students. She opened up to us quickly and she carried out the research on RT-LAMP, a DNA based diagnosis for viral infection with Dr. Kamiyama. She worked very hard and considered the experimental design carefully. Finally, she could find an appropriate condition to detect Chikungunya Virus by RT-LAMP assay. I hope, one day, she will come to Oita again as a Ph.D. student.

   
     2017年8月21日 研究室配属初日  
   
     2017年9月03日 研究室配属レク  
   
   中国の河北医科大学から研究室配属で短期留学中のWangさんとLiさんを歓迎するため、小旅行を後藤君、峯さん、山村君が企画してくれました。佐伯の塩湯で海鮮料理を食べ、高千穂峡まで足を伸ばしました。