研究活動 Projects

    目次

  1. 東温スタディ
  2. 愛媛県大洲市における循環器疾患予防対策推進のためのコホート研究
  3. 大規模分子疫学コホート研究(次世代多目的コホート研究:JPHC-NEXT)における愛媛県内コホートの構築
  4. 多目的コホート研究のデータを用いた科学的エビデンスの創出
  5. 東温市地域住民の健康寿命に関する疫学研究
  6. 高校生の生活習慣の変化に影響を及ぼす要因の解明

1.東温スタディ

東温スタディは、斉藤教授らが愛媛大学在籍中に愛媛県東温市において開始した研究です。糖尿病やメタボリックシンドロームの機序を解明するため、様々な生活習慣や動脈硬化性疾患関連マーカーを測定し、疫学的なアプローチから日本人の新しい危険因子を探求しています。

現在は、愛媛大学医学部糖尿病内科・愛媛大学農学部を中心に、順天堂大学等から研究者が集い、本研究が継続され、日本を代表する研究へと発展しています。大分大学医学部公衆衛生・疫学講座も本研究に参加して参ります。

詳しくは、以下のホームページをご参照ください。

本研究は,大分大学医学部倫理委員会において外部委員も交えて厳正に審査され承認され,大分大学医学部長の許可を得ています(2019年5月20日承認:承認番号1606)。

現在、本学で分析しているテーマを紹介します。

■ 自律神経系機能は社会経済的要因(SES)と糖尿病発症との関連をリンクするのか?

自律神経系機能は、心拍のRR間隔の変動を用いて評価できます。RR間隔は絶えず揺らいでおり、その揺らぎをスペクトラム解析することで周波数成分を取り出すことができるのです。そこで、東温スタディでは、示指を用いた5分間の測定を行い、心拍変動の指標を測定し、様々な観点から分析をしてきました。

これまで、2000人近くの受診者を対象に、心拍変動がインスリン抵抗性やインスリン感受性、高感度CRP、メタボリックシンドローム、早朝家庭血圧と関連していることを報告してきました。特に、副交感神経系機能の活動の低下との関連が示唆され、自律神経系機能の低下が高血圧や糖尿病、ひいては動脈硬化性疾患の発症に関与している可能性が見えてきました。

近年、社会疫学の領域においてSESと疾病発症との関連が注目されています。「健康格差」と呼ばれるSESが糖尿病や肥満、循環器疾患の発症リスクを上昇することが報告されていますが、その機序はよくわかっていません。そこで、自律神経系機能がSESとどの程度関連しているのか、疫学的なアプローチから分析を行っています。

東温スタディは、他にも生活習慣病に関する様々な研究テーマで分析を行うことが可能です。最近では、軽度認知機能障害(MCI)やフレイルの評価指標を用いて研究が進んでいます。

2.愛媛県大洲市における循環器疾患予防対策推進のためのコホート研究

■ 大洲コホートⅠ・大洲コホートⅡ

本研究は,1996~1998年度のベースライン調査からなる大洲コホートⅠ(5161人)と2009~2011年度のベースライン調査から なる大洲コホートⅡ(3600人)から構成されています。脳卒中と心筋梗塞といった循環器疾患発症をアウトカムとするコホート研究であり,疫学的な危険因子の評価を行うことにより疾患の予防を図ることを目的とします。

ベースラインデータには生活習慣アンケートおよび保健・福祉・医療事業等資料を,追跡期間中のアウトカムには死亡,循環器疾患発症の有無を用いて検討を行い,社会環境因子(生活習慣及び健康状態)がその後の疾病の発症および寿命等に与える影響とその寄与割合を明らかにします。

本研究は,大分大学医学部倫理委員会において外部委員も交えて厳正に審査され承認され,大分大学医学部長の許可を得ています(2019年4月15日承認:承認番号1591)。

<<オプトアウト:研究の概要>>



■ メタボリックシンドロームと脳卒中罹患

斉藤教授が愛媛大学在籍中,大洲コホートⅠのデータを用いてメタボリックシンドロームの脳卒中罹患に及ぼす影響について報告しました(日本公衆衛生雑誌 54:677-683, 2007)。2008年度から開始された特定健診・特定保健指導が脳卒中予防に対して効果があるのかどうか,コホート研究を用いて検証したデータです。
スライド1に結果を示していますが,基準(ウエスト正常かつリスクなし)に比べてウエスト周囲長高値かつリスク2個以上(図の赤塗で示された群,いわゆるメタボ)のハザード比と集団寄与割合はそれほど大きくありませんでした。一方,ウエスト周囲長が正常で,かつリスク1個を有する群の集団寄与割合が最も大きく,ウエスト周囲長が正常な場合に保健指導から見逃される恐れがあることを指摘しました。
現在,非肥満者においても指導の重要性があることは特定健診マニュアルの改訂にともない留意事項の中で述べられていますが,制度が始まる前の比較的早期に本コホートはその注意喚起を行うことができました。


<スライド 1>

3.大規模分子疫学コホート研究(次世代多目的コホート研究:JPHC-NEXT)における愛媛県内コホートの構築

国立がん研究センター(主任研究者:津金昌一郎)が実施している次世代多目的コホート研究(JPHC-NEXT)の愛媛県地域のフィールドとして、愛媛県大洲市においてコホート研究を実施しています。
本地域では、2019年度より5年後調査を開始しています。

本研究は,大分大学医学部倫理委員会において外部委員も交えて厳正に審査され承認され,大分大学医学部長の許可を得ています(2018年11月19日承認:承認番号P-18-08)。

詳細は以下のJPHC-NEXTのホームページをご覧ください。

4.多目的コホート研究のデータを用いた科学的エビデンスの創出

大分大学医学部公衆衛生・疫学講座では,国立がん研究センターと協同し,国立がん研究センターが平成元年から実施してきた多目的コホート研究(JPHC Study)のデータ分析を通じて,「多目的コホート研究のデータを用いた科学的エビデンスの創出」をテーマとする研究を行っています。

本研究は,大分大学医学部倫理委員会において外部委員も交えて厳正に審査され承認され,大分大学医学部長の許可を得ています(2018年11月19日承認:承認番号1523)。

<<オプトアウト:研究の概要>>

5.東温市地域住民の健康寿命に関する疫学研究

本研究は,1996年(平成8年)4月1日より,愛媛県東温市(旧:温泉郡重信町在住の60歳以上の者,市町村合併に伴い2006年度以降は東温市65歳以上の者)を対象に5年毎に実施している観察型疫学研究です。悉皆的なアンケート調査を,1996年対象者4545人,2001年対象者5660人,2006年対象者7413人,2011年対象者8768人,2016年対象者10,145人,のべ36531人に対して実施してきました。

現在,愛媛大学大学院教育学研究科臨床心理学コース加藤匡宏准教授を研究代表者とし,同学部の倫理審査委員会の承認を得て本研究が継続されています。また,大分大学医学部倫理委員会においても外部委員を交えて厳正に審査・承認され,大分大学医学部長の許可を得て分析を行って参ります(2019年8月22日承認:承認番号1664)。

我が国の人口は急速に高齢化し,高齢者の健康を保持・増進していくことは公衆衛生的に重要な課題です。単に身体的健康レベルが高いことだけでは不十分であり,近年ではQOLや社会的活動性が高レベルに保たれること,すなわち「健康寿命」が高いことが望まれるようになってきています。

一方で,高齢者を取り巻く環境面では,老人世帯(日本全世帯のうち,老人の単独世帯:約7.0%,老人のみの世帯:約6.6%)の増加,核家族化・少子化等に代表されるような家族形態の変化や,地域コミュニティとの関係の希薄化など,家族・家庭の形態やそれを取り巻く社会環境の著しい変化が生じています。

本研究は,高齢者の死亡やADL(日常生活動作)低下に対し,情緒的および手段的なサポート,家族形態,抑うつ,社会的活動性の低下などの高齢者の精神的・心理的・社会的側面との関連を明らかにすることを目的に,地域高齢者の寿命及びADLを規定する因子とその寄与割合を明らかにしていきたいと考えています。

6.高校生の生活習慣の変化に影響を及ぼす要因の解明

生活習慣が確立される前の高校生世代において、健康的な生活習慣を身に付けることは重要です。しかし、高校生の生活習慣に影響を与える要因について包括的に検討した研究は少ない状況にあります。
そこで本課題では、

  1. 高校生の生活習慣の実態を明らかにするとともに、1年生時から3年生時にかけての生活習慣の変化に影響を与える要因を明らかにしていきます。
  2. 高校生向けの保健教育用の教材の作成を行います。

これまで、ある県の高等学校の在籍生徒約1万人を対象に自記式質問調査票を用いた縦断的疫学調査を実施しました。現在解析しているベースライン調査のテーマを紹介します。


■ 高校生においてインターネット依存と睡眠障害とは関連するのか?

2016年現在、インターネットは全世界の48%の人に利用され、利用者の増加とともにインターネット依存という問題が起きてきました。このインターネット依存とは、「インターネットに過度に没入してしまうあまり、コンピューターや携帯電話が使用できないと何らかの苛立ちを感じる状態や、実生活における人間関係を煩わしく感じたり、通常の対人関係や日常生活に弊害が生じているにもかかわらずインターネットに嗜癖してしまう状態」とされます。

一方、高校生にとって睡眠は、行動や情動などの発達に対し、多大な影響を及ぼすため重要です。しかし、インターネット依存と睡眠障害の関連については充分に解明されているとは言えない状況にあります。

この解析では、インターネット依存尺度{Young Diagnostic Questionnaire (YDQ)}と、日本語版ピッツバーグ睡眠指標(PSQI)、 それから性別などの基本属性と、食事などの生活習慣、そして情動・意識に関する項目を用いました。インターネット依存ありと睡眠障害ありの定義は先行研究の基準に従いました。

その結果、有効回答者5316人のうち、約半数に睡眠障害が、1割強にインターネット依存がみられました。多変量解析を行うと、インターネット依存がある人では、ない人に比べて「睡眠障害あり」に分類される確率が約2倍であることがわかりました。

■ 大学等への進学に対する費用面での不安と睡眠障害は関連するのか?

諸外国において、socio-economic status(SES)は低い睡眠の質との関連が指摘されています。しかし、日本においてSESと思春期の睡眠との関連は不明です。

そこで、高校生における大学等への進学に対する費用面での不安と睡眠障害との関連を検討しました。進学に対する費用面での不安ありは、内閣府が平成25年の調査で尋ねた項目を用いました。「大学など(高等教育機関)への進学について、あなたの考えに近いのは次のうちどれですか」の質問に対して、「進学したいと考えているが、費用面での不安がある」と回答した者を費用面での不安ありとした。そして「進学したいと考えており、特に不安はない」と回答したものを不安なしとした。なお、「進学したいと考えているが、自らの能力の面で不安がある」と回答した者は解析対象から除外しました。

多変量解析を行うと、費用面での不安がある人は、ない人に比べて「睡眠障害あり」に分類される確率が約1.5倍となることがわかりました。

■ 高校生の将来飲酒意識はどのような生活習慣と関連するのか?

これまで『酒は百薬の長』と言われ、たしなまれてきましたが、最新のメタアナライシスでは、飲酒はがんをはじめ多くの疾患の危険因子であること、そしてそのリスクは飲酒量の増加とともに上昇することが明らかとなってきました。飲酒をはじめ高校生の生活習慣に影響を与える要因について包括的に検討した研究は少ない状況にあります。

そこで本研究では、将来の飲酒行動に関する意識(将来飲酒意識)を尋ね、関連する要因について明らかにすることとしました。

将来飲酒意識は、先行研究の将来喫煙意識をアレンジしました。「成人になったとき、自分はお酒を飲んでいると思いますか」との質問に対し、5件法で回答するものです。本研究では、”絶対飲んでいない”、“たぶん飲んでいない”、“どちらともいえない”を将来飲酒意識”なし“としました。”多分飲んでいる“、”絶対に飲んでいる“を将来飲酒意識”あり“としました。

将来飲酒意識のある人は、ない人に比べて、運動部時間が1時間以上であること、友人の数が11人以上であること、美容・容姿への関心があることなど、活動的・社交的と考えられる要因との関連性が認められました。一方、睡眠時間が短かったり、長かったりすることや課外学習時間が1時間未満であることなど、好ましくない要因との関連性も認められました。

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