東温スタディは、斉藤教授らが愛媛大学在籍中に愛媛県東温市において開始した研究です。糖尿病やメタボリックシンドロームの機序を解明するため、様々な生活習慣や動脈硬化性疾患関連マーカーを測定し、疫学的なアプローチから日本人の新しい危険因子を探求しています。
現在は、愛媛大学医学部糖尿病内科・愛媛大学農学部を中心に、順天堂大学等から研究者が集い、本研究が継続され、日本を代表する研究へと発展しています。大分大学医学部公衆衛生・疫学講座も本研究に参加して参ります。
詳しくは、以下のホームページをご参照ください。
https://www.toon-study.jp/
本研究は,大分大学医学部倫理委員会において外部委員も交えて厳正に審査され承認され,大分大学医学部長の許可を得ています(2024年6月27日変更承認:承認番号1606)。
<<オプトアウト:研究の概要>>
現在、本学で分析しているテーマを紹介します。
自律神経系機能は、心拍のRR間隔の変動を用いて評価できます。RR間隔は絶えず揺らいでおり、その揺らぎをスペクトラム解析することで周波数成分を取り出すことができるのです。そこで、東温スタディでは、示指を用いた5分間の脈拍の測定を行い、脈拍(心拍)変動の指標を解析し、様々な観点から分析をしてきました。安静時の場合、脈拍はほぼ心拍に一致することから、より簡便な心拍変動の代替指標としての活用が期待されます。
これまで、2000人近くの受診者を対象に、心拍変動がインスリン抵抗性やインスリン感受性、高感度CRP、メタボリックシンドローム、早朝家庭血圧と関連していることを報告してきました。特に、副交感神経系機能の活動の低下との関連が示唆され、自律神経系機能の低下が高血圧や糖尿病、ひいては動脈硬化性疾患の発症に関与している可能性が見えてきました。
近年、社会疫学の領域においてSESと疾病発症との関連が注目されています。「健康格差」と呼ばれるSESが糖尿病や肥満、循環器疾患の発症リスクを上昇することが報告されていますが、その機序はよくわかっていません。そこで、自律神経系機能がSESとどの程度関連しているのか、疫学的なアプローチから分析を行っています。
東温スタディは、他にも生活習慣病に関する様々な研究テーマで分析を行うことが可能です。最近では、軽度認知機能障害(MCI)やフレイルの評価指標を用いて研究が進んでいます。
本研究は,1996~1998年度のベースライン調査からなる大洲コホートⅠ(5161人)と2009~2011年度のベースライン調査から なる大洲コホートⅡ(3600人)から構成されています。脳卒中と心筋梗塞といった循環器疾患発症をアウトカムとするコホート研究であり,疫学的な危険因子の評価を行うことにより疾患の予防を図ることを目的とします。
ベースラインデータには生活習慣アンケートおよび保健・福祉・医療事業等資料を,追跡期間中のアウトカムには死亡,循環器疾患発症の有無を用いて検討を行い,社会環境因子(生活習慣及び健康状態)がその後の疾病の発症および寿命等に与える影響とその寄与割合を明らかにします。
本研究は,大分大学医学部倫理委員会において外部委員も交えて厳正に審査され承認され,大分大学医学部長の許可を得ています(2024年6月27日変更承認:承認番号1591)。
<<オプトアウト:研究の概要>>
斉藤教授が愛媛大学在籍中,大洲コホートⅠのデータを用いてメタボリックシンドロームの脳卒中罹患に及ぼす影響について報告しました(日本公衆衛生雑誌 54:677-683, 2007)。2008年度から開始された特定健診・特定保健指導が脳卒中予防に対して効果があるのかどうか,コホート研究を用いて検証したデータです。
スライド1に結果を示していますが,基準(ウエスト正常かつリスクなし)に比べてウエスト周囲長高値かつリスク2個以上(図の赤塗で示された群,いわゆるメタボ)のハザード比と集団寄与割合はそれほど大きくありませんでした。一方,ウエスト周囲長が正常で,かつリスク1個を有する群の集団寄与割合が最も大きく,ウエスト周囲長が正常な場合に保健指導から見逃される恐れがあることを指摘しました。
現在,非肥満者においても指導の重要性があることは特定健診マニュアルの改訂にともない留意事項の中で述べられていますが,制度が始まる前の比較的早期に本コホートはその注意喚起を行うことができました。
この研究は、同一集団の追跡期間を18.6年間まで延長し、新たな分析を行っています。その結果、ほぼ同様の知見が得られ、ウエスト周囲長が正常、かつリスク1個を有する群のPAF(18.9%)が最も大きく、脳卒中予防のターゲットはここに絞るべきであるというエビデンスが得られています。
本研究は、2024年度から愛媛県大洲市において、社会心理学的要因を把握し、さらにその指標となるバイオマーカーの測定と合わせ、循環器疾患発症に関するコホート研究を新たに実施します。社会心理学的要因から循環器疾患発症につながる新たなエビデンスの創出を目指すことを目的とします。
ベースラインデータにはJPHC-NEXT研究で用いられた10年後アンケート、フレイル・サルコペニア項目測定・問診の結果を、研究参加者の同意に基づき収集します。また、大洲市が保健事業で実施した特定健診と尿中ナトリウム・カリウム比情報を収集します。さらに、検査会場において自律神経系機能検査、血管年齢測定、軽度認知障害検査、咀嚼能力検査(唾液収集を含む)を行います。追跡期間中のアウトカムには死亡,循環器疾患発症の有無を用いて検討を行い,社会環境因子(生活習慣及び健康状態)がその後の疾病の発症および寿命等に与える影響とその寄与割合を明らかにします。
本研究は,大分大学医学部倫理委員会において外部委員も交えて厳正に審査され承認され,大分大学医学部長の許可を得ています(2024年7月24日新規承認:承認番号2872-D33)。
<<オプトアウト:研究の概要>>
<実施会場風景>
国立がん研究センター(主任研究者:澤田典絵)が実施している次世代多目的コホート研究(JPHC-NEXT)の愛媛県地域のフィールドとして、愛媛県大洲市においてコホート研究を実施しています。本地域では、2019年度より5年後調査、2024年度より10年後調査を開始しています。
本研究は,大分大学医学部倫理委員会において外部委員も交えて厳正に審査され承認され,大分大学医学部長の許可を得ています(2024年6月27日変更承認:承認番号P-18-08)。
<<オプトアウト:研究の概要>>
詳細は以下のJPHC-NEXTのホームページをご覧ください。
https://epi.ncc.go.jp/jphcnext/
大分大学医学部公衆衛生・疫学講座では,国立がん研究センターと協同し,国立がん研究センターが平成元年から実施してきた多目的コホート研究(JPHC Study)のデータ分析を通じて,「多目的コホート研究のデータを用いた科学的エビデンスの創出」をテーマとする研究を行っています。
本研究は,大分大学医学部倫理委員会において外部委員も交えて厳正に審査され承認され,大分大学医学部長の許可を得ています(2018年11月19日承認:承認番号1523)。
<<オプトアウト:研究の概要>>
本研究は,1996年(平成8年)4月1日より,愛媛県東温市(旧:温泉郡重信町在住の60歳以上の者,市町村合併に伴い2006年度以降は東温市65歳以上の者)を対象に5年毎に実施している観察型疫学研究です。悉皆的なアンケート調査を,1996年対象者4545人,2001年対象者5660人,2006年対象者7413人,2011年対象者8768人,2016年対象者10,145人,のべ36531人に対して実施してきました。
現在,愛媛大学大学院教育学研究科臨床心理学コース加藤匡宏准教授を研究代表者とし,同学部の倫理審査委員会の承認を得て本研究が継続されています。また,大分大学医学部倫理委員会においても外部委員を交えて厳正に審査・承認され,大分大学医学部長の許可を得て分析を行って参ります(2019年8月22日承認:承認番号1664)。
我が国の人口は急速に高齢化し,高齢者の健康を保持・増進していくことは公衆衛生的に重要な課題です。単に身体的健康レベルが高いことだけでは不十分であり,近年ではQOLや社会的活動性が高レベルに保たれること,すなわち「健康寿命」が高いことが望まれるようになってきています。
一方で,高齢者を取り巻く環境面では,老人世帯(日本全世帯のうち,老人の単独世帯:約7.0%,老人のみの世帯:約6.6%)の増加,核家族化・少子化等に代表されるような家族形態の変化や,地域コミュニティとの関係の希薄化など,家族・家庭の形態やそれを取り巻く社会環境の著しい変化が生じています。
本研究は,高齢者の死亡やADL(日常生活動作)低下に対し,情緒的および手段的なサポート,家族形態,抑うつ,社会的活動性の低下などの高齢者の精神的・心理的・社会的側面との関連を明らかにすることを目的に,地域高齢者の寿命及びADLを規定する因子とその寄与割合を明らかにしていきたいと考えています。
(編集中)