大分大学医学部公衆衛生疫学講座

社会活動 Social Activities

 公衆衛生・疫学講座は、社会が抱える様々な健康課題に対峙するため、公衆衛生の専門家として積極的に社会活動に取り組んでいます。
 現在取り組んでいる主な活動を紹介します。


1.地方自治体との活動

大分県地域医療構想への参画

 令和2年より、斉藤功教授が大分県地域医療構想アドバイザーに就任し、大分県の地域医療構想にかかる分析を開始しました(受託研究「大分県地域医療構想の推進を目的とするレセプト分析」(大医倫:承認番号1903))。
 地域医療構想とは、高齢者人口の増加が2025年にピークアウトしますが、その後の将来の医療需要に対応した新たな医療体制を構築することを目的とするものです。地域医療構想の都道府県計画が作成され、大分県においても平成28年に将来の医療需要に基づいた策定が行われました。将来の人口減少にともなって医療需要は減少することが見込まれています。そのため、現在の病床数から、医療需要の推定から求められる必要病床数まで減らすことが求められています。
 しかしながら、病床には高度急性期、急性期、回復期、慢性期といった機能があり、この病床機能のどの部分の削減が必要なのか(逆に増やす必要の場合もある)、医療圏毎に慎重に検討する必要があります。
 次の図は、大分県の各病院における救急者の受け入れ件数を示しています(「平成30年度病床機能報告」より作成、メッシュは人口分布を表している。)。

 大分県の場合、大分市・別府市に医療が集中しており、救急搬送の受け入れを行っている病院もその地域に集中していることがわかります。一方、豊肥地域や南部は救急車を受け入れられる病院が限られています。
 当講座では、将来の大分県地域医療構想を推進するため、各保険者の同意に基づき、国保および後期高齢者医療レセプト等の医療情報を活用しながら様々な角度から分析を行っています。

愛媛県ビッグデータ活用事業への参画

 愛媛県・愛媛大学と連携し、愛媛県の国保・協会けんぽの健診データを活用し、データの見える化と有効な情報発信の在り方について検討をしています。健康指標の地域間の均等化とヘルスプロモーションの推進を目指すとともに、行政職における若手専門家の育成を実践していきます。
 1年目は、2次医療圏単位で高血圧の標準化該当比を求めました。そのデータに基づいてマップで示しました。宇和島圏域、宇摩圏域の高血圧標準化該当比が有意に高く、逆に松山圏域の標準化該当比が低いことがわかりました。高血圧の分布は医療圏によって異なり、地域間の大きな偏りがあることが明らかになりました。
 国保のデータは比較的高齢者に偏っており、逆に協会けんぽのデータは若い年齢層が多くなります。しかしながら、これらを統合することによって国勢調査で得られる愛媛県全体の年齢構成に非常に近い分布を得ることができました。
 特定健診・特定保健指導が始まり保険者は国保のデータに注目していますが、その一方で、健康増進法では地域全体を見渡す必要があります。その意味では協会けんぽのデータと統合することは、大きな意味があることだと考えられます。


(参考)愛媛県ビッグデータ活用県民健康づくりについて
 https://www.pref.ehime.jp/h25500/bigdata.html

愛媛県医療費適正化推進事業

第3期愛媛県医療費適正化計画の委員会において、様々な団体と協議を重ね医療費適正化計画の取りまとめを行っています。医療費に及ぼす要因の分析と具体的な数値目標の設定が含まれています。

https://www.pref.ehime.jp/h20180/iryouhitekiseikakeikaku/iryouhi.html

2.住民組織の活動支援

いよし健康づくり会・とうおん健康づくりの会

 この度、東温市の「とうおん健康づくりの会」、伊予市の「いよし健康づくりの会」ならびに両市のコメディカルスタッフ(保健師、管理栄養士等)が、同一指導者と共通の理念のもとで地域住民、行政、大学の協同により組織化された公衆衛生活動を行ってきたことが評価され、「第17回日本心臓財団小林太刀夫賞」を受賞しました。
 この活動は、本講座の斉藤功教授が愛媛大学において10年間継続し、現在は愛媛大学に引き継がれている公衆衛生活動です。両会の活動の内容を動画でまとめましたのでご紹介します。


【とうおん健康づくりの会・いよし健康づくりの会 活動内容movie】  制作:2021年



 愛媛大学医学部公衆衛生学教室の故小西正光教授の意思を引き継ぎ、健康づくり会の運営に携わっていました。すでに10年を超える活動が続いています。地域の自助・共助を支える取り組みとして、公衆衛生活動の実践の場として非常に重要であると考えています。
とうおん健康づくりの会の取り組みは、同市の広報で分かりやすく伝えられています。一度ご覧いただければ幸いです。


「特集 健康って楽しみ上手!」

 公民館で体操したり、みんなで歩いたりしているグループはよく見かけますが、本会は規約を作り、年1回の総会に基づき活動を行っています。会員数は400人近くに上り、その活動は、健診での案内係、便りの発行、班活動などが組織的に行われています。行政の支援を受けながら、予算ゼロで活動が続いている本会は、自主的な健康づくり会の理想的な形であると思います。

 いよし健康づくり会会則の前文には、「私たちは、伊予市民一人ひとりが健康で心豊かな人生を過ごすためには、健康づくりの主役は自分自身であることを認識し、健康保持に関する正しい知識を身につけると共に、地域にその輪を拡げ、地域力を育み、すべての市民の健康寿命を延ばし、私たちのふるさと・伊予市を「みんなでつくる健康のまち」にいたします。」と書かれています。
 これからも、微力ですが地域の活動に貢献できればと思います。

 大分県での実績はまだありませんが、当講座として自主グループと関われる機会を持ちたいと考えています。