大分大学医学部

准教授

文室 知之

FUMURO Tomoyuki


脳のはたらき、生体から調べる機能

運動準備と空間注意、てんかんの病態について主に脳波を用いて研究しています。

運動の際の脳活動を調べると、脳の中で前頭葉の運動野と呼ばれる領域が働きます。私たちは日常の中で、単純動作のみならず、目の前にある物に手を伸ばす行為を頻繁に行っています。手を伸ばして物を掴むには、運動能力に加えて対象物までの距離や角度に関する認識・判断が必要です。このときには前頭部のみならず、視覚的な空間認知に関わる頭頂・後頭部までの広い領域で活動が起こります(図はfumuro et al., 2015 Clin Neurophysiolより引用)。このように、運動の条件によって脳がどのような働きをしているか調べています。

大学病院をはじめとする医療機関の協力を得て、てんかんの病態に関する研究を行っています。臨床検査技師として、以前の職場ではてんかん患者を対象にした長時間ビデオ・脳波モニタリング検査を行っていました。てんかんの診療や治療において、臨床検査としての脳波記録は重要な役割を果たしています。また、脳波・眼球運動・筋放電などの生体情報から睡眠の深さを知ることもできます。医学部に新設された学科として臨床に関係する研究を進めて行きます。

主要業績等
教育
1年次:
医療科学入門、早期体験実習
2年次:
生命ホメオスタシス学Ⅲ、生命ホメオスタシス解析学Ⅰ、臨床検査学、イムノメタボリズム学Ⅲ、研究室配属Ⅰ
3年次:
生体計測装置学、生命ホメオスタシス解析学Ⅱ、イムノメタボリズム解析学、研究室配属Ⅱ
4年次:
メディカルキャリアデザイン、多職種連携演習、臨地実習、卒業研究

最近の研究トピック

フィードバック療法
フィードバック療法とは、医療機器を通して自己の生体情報を視聴覚的に感知できるように変換した上で、患者が自身の状態をよりよい方向に変化・維持できるように調整するための訓練法です。このうち、脳波などの神経活動を用いた方法をニューロフィードバックとよびます。
脳波にはさまざまな成分が含まれていますが、その中には脳皮質の興奮性を反映して数秒単位でゆっくりと変化する電位成分(Slow cortical potential:SCP)があります。脳の一部で神経細胞の突発的な過剰興奮が起こる疾患では、発作時に焦点部位から同成分の変化が記録されることがあります。
私たちが2025年2月にClinical Neurophysiology誌に掲載した研究では、SCPフィードバックをおよそ3週間に渉って繰り返し行うことにより、同成分の自律的な調節が可能になるケースがあることがわかりました。
(図はFumuro et al., 2025, Clin Neurophysiolより引用)

関連論文はこちら ※PubMedの抄録記載のウェブサイト