• 大分大学医学部

  • 臨床薬理学講座

臨床薬理学とは

臨床薬理学とはどのような学問でしょうか

近年、科学の発展に伴い、確実に薬効を示す薬や、新しい作用機序をもつ特徴のある薬が次々に開発されています。これらの薬により、多くの疾患が治療可能になり、人類の福祉に大きく貫献してきました。

しかしながら、これらの薬は明らかな薬効を有し、使い方によっては副作用を生じます。さらに、高齢化が碓実に進み、複数の疾患を合わせ持つ、患者さんが増加しています。このため、いくつかの領域にまたがる多剤併用が問題になっています。このように各種疾患時、あるいは多剤併用時などにおける薬の選択や、投与量、投与方法の決定など、古くから医師の経験、勘に頼っていた"さじ加減"ではもはや対応不能となっていることは明らかであります。

したがって、科学的に薬効を評価することによって薬の適応を決定し、疾患に基づく薬物体内動態の変化に対応した投与設計を行い、安全でかつ有効な薬物治療を確立していく体系化が重要な課題となってきています。臨床薬理学は、薬効評価学に端を発し、薬物療法を経験・勘の領域より科学の領域として研究するために発展してきた学問です。

臨床薬理学の定義

臨床薬理学の定義について、日本臨床薬理学会では「薬物の人体における作用と動態を研究し、合理的薬物治療を確立するための科学である」と述べています。さらにつけ加えると臨床薬理学はよりよい薬物治療の確立を通して人類の福祉に貢献する学問領域であると位置づけられます。

臨床薬理学の領域

臨床薬理学の研究領域は、ヒトにおける薬理学研究(human pharma-cologicalstudy)、臨床薬物動態学研究(clinical pharmacokine- tic study)、臨床薬効評価(clini- cal drug evaluation)が3本に加えて、最近急速に進歩している臨床薬理遺伝学(clinical pharmaco- genetics /genomics)も新たに加わっています。臨床薬理学これらを統合して合理的な薬物治療をめざす学問領域です。

最適な薬物治療

古くは名医の条件の一つとして薬の"さじ加減"(Art)ができる医師だといわれました。現在でもさじ加減は薬物治療の個別化行う上で重要です。しかし、合理的な薬物治療はArtのみではなく根拠に基づいた薬物治療を実践するためのScienceが基本です。このためには臨床試験を通してエビデンスの確立が必要となります。エビデンスに基づいた最適な薬物治療の考え方はEBM(Evidence-based Medicine)の実践につながってきます。

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