[発行] 大分大学医学部附属病院広報誌発行委員会

教授に就任して

泌尿器科 教授
三 股 浩 光
(みまた ひろみつ)

 

写真 6月1日より泌尿器科教授と人工透析部長を兼任させて頂いている三股です。

 大分大学医学部附属病院泌尿器科は腎臓、膀胱、前立腺、精巣などの尿路性器疾患と副腎や上皮小体などの内分泌腫瘍に対する外科治療を主な専門としています。

 当科の特徴は患者さんの『生活の質(QOL)』を重視した治療を心掛けていることです。腎臓や副腎では大部分の手術を内視鏡下に行っており、全国的にも非常に早い時期に開始しています。1980年代後半には尿路結石や水腎症に対する内視鏡手術を、そして1992年以降は副腎腫瘍や腎腫瘍に対して腹腔鏡下手術を開始しています。現在では大分県下の腎臓や副腎の摘出術は8割以上が腹腔鏡下手術で行われており、全国的にも非常に進んだ県として知られています。昨年より泌尿器科領域の腹腔鏡下手術に関連した事故がマスコミをにぎわしていますが、当科では十分に経験を積んだ医師が医療安全に細心の注意を払い、慎重に腹腔鏡下手術を行っております。しかし万が一、医療事故を起こした場合には当科としては誠実に説明責任を果たし、できる限りの対応をいたしますので、医療事故でなくとも何らかの不満や疑問を持たれたときには、どうぞ御遠慮なくお話下さい。

 前立腺癌に対する前立腺全摘除術に関しては、腹腔鏡下手術は患者さんにとって真に低侵襲で安全な手技とは考えておりません。当科では通常の半分以下の切開で行う小開腹前立腺全摘除術を全国に先駆けて始めており、手術時間や出血量、術後の合併症などは全国でもトップクラスの成績です。しかし前立腺癌の根治療法は手術だけでなく放射線療法もあり、当院でも放射線療法を積極的に行っていますので、患者さんには十分なインフォームドコンセントを行ってから、患者さん御自身で治療法を決定して頂いております。

 また最近10年間に私が力を入れてきたものとして膀胱全摘後の腸管利用代用膀胱造設術が挙げられます。膀胱を摘出しなければならない患者さんに対して、小腸を用いて代用膀胱を作成し、手術前と同じ生活を可能とする手術法です。患者さん方からは大変満足して頂いておりますので、今後は勃起神経温存などのより術後合併症の少ない手技も併用していく予定です。

 本年4月以降は血液透析を月水金の隔日から月曜から土曜までの毎日行うことにしています。これまでは7人までしか透析患者さんの入院ができませんでしたが、現在は14人以上の入院が可能となっていますので、入院待ちも短くなっています。さらに人工透析部専属の看護師や臨床工学士も配置されましたので、より充実した透析医療を提供できるようになりました。

 その他に10月からは金曜午後に泌尿器科女医による女性の頻尿・尿失禁外来を開始します。羞恥心から泌尿器科を受診しづらかった女性の患者さんも、これからは気軽に受診できるものと思います。尿失禁治療には体操や薬物療法、電気刺激療法、コラーゲン注入療法、手術療法と様々な治療法がありますので、御遠慮なく相談して頂きたく存じます。

 また尿路結石に対する体外衝撃波治療(ESWL)も10月より最新機種が稼動します。従来の機械では腎結石と上部尿管の結石しか破砕できませんでしたが、最新機種は下部尿管や膀胱結石も破砕できますので、多くの患者さんが手術を受けなくて済むようになると思います。

 

 

最終更新日時: 大分大学医学・病院事務部管理課作成