[発行] 大分大学医学部附属病院広報誌発行委員会

教授に就任して

 

 

<皮膚がんと転移>
 皮膚がんには、たくさんの種類があり、みた目も様々です。その中には、めったに転移をしないものもあれば、進行すると全身に転移するものもあります。転移には大きく分けて、がん細胞がリンパ管を通ってリンパ節に転移する場合と血管を通って臓器に転移する場合があります。リンパ管の途中にはリンパ節があり、ここでがん細胞がひっかかるので、がん細胞にとって、リンパ節は関所のようなものといえます。

<センチネル(見張り)リンパ節とは?>
 センチネル(見張り)リンパ節とは、病巣からリンパ管にのってはじめにひっかかるリンパ節のことをいいます。多くの場合、このセンチネルリンパ節を調べて、がん細胞の転移がなければ、次のリンパ節にも転移がないと推測されます。

<センチネル(見張り)リンパ節をみつける方法>
 皮膚がんの病巣部の周りに、検査薬を注射します。この検査薬はリンパ管に沿って流れていき、センチネルリンパ節にたまります。体のどこにたまっているかを撮影し(シンチグラフィー)、それを参考にして、手術中に検査薬に音で反応する特殊な機械でセンチネルリンパ節を探しあてて摘出します(センチネルリンパ節生検)。摘出したセンチネルリンパ節は、非常に細かくスライスして病理検査をし、がん細胞の転移を見逃さないようにしています。

<センチネル(見張り)リンパ節生検の長所>
 従来では、がん病巣が大きい場合やCTなどの画像で転移を疑うリンパ節があれば、そのリンパ節の周囲の組織を大きく切除していました(リンパ節郭清術)。これにより、様々な合併症が生じます。センチネルリンパ節生検は、転移がなければ、リンパ節郭清術をしなくてもよく、術後の合併症を大きく減らせます。当院皮膚科では、平成17年度より、センチネルリンパ節生検を行っています。

<早期受診を!>
 皮膚がんは、早期発見すればほとんどが完全に治癒します。しかし、進行して初めて受診するケースも多いのです。皮膚の変化を見逃さず、自己判断せずに早めに受診することこそ最も大切なのです。

 

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問合せ先:皮膚科           
電話 097-586-5882

(文責 皮膚科 甲斐 宜貴)


最終更新日時: 大分大学医学・病院事務部管理課作成