[発行] 大分大学医学部附属病院広報誌発行委員会

診断・治療の最新情報

 

 本院は、平成19年8月から早期前立腺癌の治療としてヨウ素125シード線源永久挿入による前立腺癌密封小線源療法(以下小線源療法)を開始しております(かけはし31号)。
  小線源療法は放射線療法のひとつであり、米国では20年以上の歴史があり、本邦では平成15年9月から治療開始され、健康保険も適用されています。小線源療法では腰椎麻酔下(治療開始初期は治療手技の安定性を向上させるため全身麻酔下で治療しておりました)に会陰部から合計20本程度の針を挿入し、直腸内に挿入された超音波プローブで位置を確認しながら、「ヨウ素125」という放射線同位元素が密封されたチタン性シード線源(長径4.5mm、直径0.9mm)を前立腺に埋め込みます(写真)。埋め込む線源数は60−100個程度で、前立腺の体積により異なります。シード線源から放出される放射線のエネルギーは非常に弱く、治療後1年経過するとほとんど放射線は放出されなくなります。シード線源は永久に前立腺内に残存しますが、体への影響はありません。従来の治療法である前立腺全摘除術や放射線外照射療法と比較しても、治療成績は同等であり性機能の温存や尿失禁の発生率が低いなど合併症が少ないことが小線源療法の長所です。また線源を埋め込む治療自体は、線源挿入前の線源配置計画時間を含めても2時間程度で終了し、通常3泊4日の入院を要しますが、入院期間が短いのも小線源療法の長所のひとつです。平成20年7月31日までに20名の患者さんを治療しましたが、線源が他臓器に迷入したり体外に脱落した例もなく、予定どおり退院され、重篤な合併症や放射線による有害事象も発生しておりません。
  また定期的に前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)を測定していますが、治療後2ヶ月でPSA値は正常化しています。本院は大分県内で唯一の小線源療法実施施設であり、腎臓外科・泌尿器科、放射線科、麻酔科の各専門医による協力のもと安全に治療することが可能です。この治療法は体への負担が小さく、手術療法が敬遠される80歳程度までの患者さんも治療対象となります。これまでの治療経験を生かし、今後は小線源療法を希望される患者さんの適応を拡げていく予定です。

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(文責 腎臓外科・泌尿器科 野村 威雄)

 

 

最終更新日時: 大分大学医学・病院事務部管理課作成