超音波を照射して骨折の治療期間を短縮する「超音波骨折治療法」を、本院整形外科が先進医療として導入しています。微弱な超音波を1日1回20分間、骨折した部位に当てることで骨の再生を促し、通常より早く治癒します。左前腕を骨折したニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜選手が、この治療を受けて早期復帰を果たしたことでも知られています。
治療は、骨折した部位の皮膚に直接、超音波を発生する機器を押し当てて行います(写真)。超音波診断装置と同程度の低出力超音波なので、体への負担や副作用はほとんどありません。機器は小型で簡単に操作でき、貸し出しが可能で自宅で治療できます。
通常より約4割早く骨がつながったという報告もありますが、年齢や骨折部位、受傷後の経過期間などによって治療成績は異なります。臨床的に有効性が認められていますが、なぜ超音波を当てると治癒が早まるのか、メカニズムは解明されていません。
先進医療として超音波骨折治療法を受けることができるのは、手足の骨折で出血を伴う手術をした場合に限られます。超音波骨折治療の費用約13万円は自己負担となりますが、診察、検査、投薬などの費用は保険適用となります。手術後3ヶ月たっても治らない「難治性骨折」の治療については保険適用となります。
整形外科は、超音波骨折治療法を使って、変形性関節症や大腿骨頭壊死症などの治療に伴う骨移動術や骨切り術、難治性骨折の治療などに成果を挙げています。
通常なら骨折治癒に10週間かかるところを、この治療法で6週間に短縮できます。一般的にはそれほど必要性はないでしょうが、早く仕事に復帰したい会社員や早期に練習を再開したいアスリートなどのニーズが高いと思われます。学会でも保険適用の拡大を求める動きがあり、将来的には高齢者を対象に、受傷後すぐに超音波骨折治療を開始して早期離床、早期リハビリを目指すような使い方も考えられます。

(文責 地域医療連携センター 白川貴美代・森久恵)
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