大分大学医学部皮膚科学講座

教授からのメッセージ

進路を迷っている方へのメッセージ:大分大学医学部皮膚科学教授、波多野 豊

初期臨床研修の後の進路に悩まれている方も多いと思います。様々な要素を考えて進路を決めて行くことになると思います。その中で、何を最も重視するかは各人によって異なると思いますが、「やり甲斐や満足感」は、常に、そのうちの上位に来るでしょう。もうひとつ、大切なことは、入局先(職場)の雰囲気や考え方だと思います。ここでは、これらの点についてもう少し詳しく述べさせて頂きます。皮膚科学の魅力については、このホームページの冒頭の挨拶でも述べておりますので、是非、お読み下さい。※形成外科については、形成外科のホームページをご覧ください。

1. 医師の満足度の高い皮膚科

皮膚科医の満足度の高さは、世界で良く知られております。少し古いデータ(2011年)ですが、22診療科を対象に、自らの診療科に対する自己評価を調査したものがあります(Who's the happiest? - PracticeLink Magazine. URL: journal.practicelink.com/vital-stats/whos-the-happiest)。この調査では、それぞれの診療科で実際に仕事をしている医師がその診療科を自己評価している点が重要です。日本で良く行われているような他科の評価も行うような調査では、所属医師の少ない科の評価は実際の状況を反映し難いと考えられます。この調査では、皮膚科は、「正当に評価されている(71%:全診療科平均53%)」「同じキャリアを選択する(76%:全診療科平均69.4%)」「同じ診療科を選択する(93%:全診療科平均69%)」の各項目において1位で、「総合満足度(80%:全診療科平均63.8%)」も1位でした。一方、報酬は8位でしたので、皮膚科医が皮膚科診療そのものに「やり甲斐と満足感」を感じている結果と言えます。この結果は、皮膚科医になって後悔した医師の割合が、他の診療科を選択して後悔した医師の割合より極めて低いことを示しています。これは、私たちの実感と同じです。皮膚科は、医学の全ての領域を包含し、内科的なものから外科的なものまで幅広く扱います。対象患者は乳児から高齢者まで老若男女を問わず様々です。皮膚を通じた「総合医」を目指すことも出来れば、「高い専門性」を追求することも出来ます。更に加えれば、皮膚科医は、やる気さえあれば、病院やクリニックなどの場所を選ばす且つ息長く活躍できるということです。「皮膚科を選んで後悔することはまずない」と自信を持って言える所以です。

2. 進化しつつある皮膚科

皮膚疾患は、「なかなか治らない」、「治療法が無い」、などのイメージがあるかもしれません。しかし、皮膚科領域の研究、治療の進歩は著しく、様変わりしつつあります。悪性腫瘍では、悪性黒色腫において免疫チェックポイント阻害剤の導入が他の悪性腫瘍に先駆けて導入され、現在も様々なレジメの研究が進行中で、皮膚科がこの領域をリードしていると言えます。また、既に様々な分子標的薬が乾癬や悪性腫瘍に導入されてきましたが、アトピー性皮膚炎でも生物学的製剤や分子標的薬の開発・使用が急速に進んでおります。円形脱毛症や白斑などの非常に難治な疾患に対しても導入が見込まれております。アレルギーの分野でも「アレルギーコンポーネント」の発見と治療への応用研究が皮膚科において盛んに行われつつあり、この領域でもリードしていると言えます。もともと、薬物療法、外科的治療、光線治療など様々なツールを駆使しながら治療を行うことが魅力でしたが、更に、最新の医学に基づく治療が次々と導入されつつあります。皮膚を通じて様々な領域を包含していますので、各領域の最新医療を体感できます。「なかなか治らない」ことや「目に見える」ことなどから、皮膚科は、研究の盛んな診療科のひとつであり、その成果が現れ始めていると言えます。私たちも病態解明や新しい治療を目指して研究を行っています。私たちと一緒に、皮膚科の進化を体感しましょう。

3. 開かれた皮膚科・必要とされる皮膚科

皮膚科学の教科書を紐解けばおわかりのように、様々な領域を含みます。則ち、様々な道が開かれていることを意味します。皮膚掻痒症、褥瘡、皮膚癌など、高齢化に伴って増加する疾患が多いのが特徴な皮膚科の地域医療における重要性は益々高まるでしょう。実際、地域の中核病院に診療に行くと多くの患者さんで外来があふれ、地域における皮膚科医不足を実感します。一方、美容皮膚科を極め、人々の生活の質を上げることに貢献している同門の先生方もおられます。生活の質を高めたいという要望が強まって来ている現代では、目に見える疾患を扱う皮膚科への期待は益々高まってくると思います。教室運営においても開かれた皮膚科を目指しています。「悪口を言わない」「足の引っ張り合いをしない」「多様性を大切に」が当講座のモットーです。伸び伸びと、そして力を合わせて、皮膚科学の発展、医師や医学者としての自己実現を目指せるような、「精神的にも開かれた」教室作りを心がけて行きたいと考えております。ですから、既に皮膚科を目指そうとしてくれている方はもちろん、進路に迷われている方にこそ皮膚科を選んで欲しいです。

入局後の研鑽

1. 基幹病院での研鑽

大分大学医学部附属病院、大分県立病院、別府医療センターでの研鑽が中心です。原則として、大分大学医学部附属病院で研鑽を開始します。各施設の皮膚科診療責任者は当教室の出身者で、コミュニケーションを密にして、基幹病院一体となった研鑽を心がけています。以下に、各施設の特徴を示します。

大分大学医学部附属病院

様々な重症、難治な疾患を抱えた患者さんが集まります。多くの先輩に囲まれながら、オールマイティーに学びます。腫瘍外来を有し、悪性腫瘍の患者さんが多いのも特徴です。手術や最新の抗腫瘍治療を体感しましょう。形成外科との協力体制が充実しているのも特徴です。1例、1例を大切にし、50年先も生き生きと働けるような診療態度の構築を目指します。

大分県立病院

市中でのアクセスが良いことも有り、様々な皮膚疾患の患者が多く集まります。独り立ちのための経験を積むのに最適です。更なる向上のための課題を深く認識する場でもあります。

別府医療センター

別府、県北地域をカバーして頑張っています。様々な皮膚疾患の患者が多く集まりますが、皮膚腫瘍科を標榜しており、悪性腫瘍の患者さんも多いです。大分大学医学部附属病院と並ぶ県内の皮膚悪性腫瘍センター的位置づけで、手術や最新の抗悪性腫瘍薬も駆使しております。様々な重症疾患への対応力が身につきますが、特に皮膚外科系の技術の向上にも適した施設です。

1. 専門他施設での研鑽

教室の発展にとっても希望に応じて実現したいと考えています。これまでに、救急病院での全身管理や他大学や他地域の基幹病院でのアレルギー診療研修などの実績があります。更に、専門医取得後のサブスペシャリティーとして美容皮膚科を学びたい場合も対応出来ます(これまでに2名研修し、1名開業)。研究面では、熊本大学発生医学研究所幹細胞誘導分野への国内留学の実績があります(海外留学実績は下記)。

1. 地域の病院での研鑽

大分医師会立アルメイダ病院(大分市)、高田中央病院(豊後高田市)、大分健生病院(大分市)、西田病院(佐伯市)に常勤の皮膚科専門医を配置しており、希望すれば、より地域に密着した医療を体感できます。

1. 皮膚科専門医への道

5年間で取得可能です。本人の意向を加味しながら主として基幹病院で研鑽します。また、皮膚科のプログラムでは、2年間、大学院や他診療科での研修も認められるというユニークな一面が有ります。
 「地域枠」の「地域勤務」にも、「へき地医療拠点病院」のひとつである高田中央病院皮膚科での研修やひとり医長でも専門医研修期間として認められる制度にて十分対応出来ます。また、地域枠での義務期間の中断・先延ばしが認められているので、専門医取得後、十分に力を付けてから地域の拠点病院で貢献するという道もあります。また、後期研修の1年目は各医局に属さず地域の病院で研修を行う制度に変更になりましたが、皮膚科専攻医希望者については、ご希望が有ればその1年目を皮膚科のプログラムに組み込むことを交渉致します。

1. 非常勤の外勤先

大分大学医学部附属病院での勤務期間中は、公立おがた病院、杵築市立山香病院、国東市民病院、大分日赤病院、南海医療センター、津久見中央病院、天心堂へつぎ病院、大分岡病院、大分こども病院などの提携病院・医院(21病院・医院)で、非常勤での皮膚科診療や当直業務を行います。地域医療への貢献や皮膚科医としての技量の向上はもちろん、収入面での補填が見込めます。

1. 大学院

事情の許す限り、大学院で研究する経験をして欲しいと考えています。皮膚科医としての成長や楽しさに繋がると考えています。先述のように、皮膚科の専攻医プログラムでは大学院を2年間認められますので研究を早く始めたい方にも適応しております。大分大学医学部独自の大分大学研修医・博士課程コース(ORPhD)プログラムを組み込めば、専門医研修に適合しながらより早く研究を開始できます。

1. 海外留学

これまで、ハーバード大学(米国)、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(米国)、ボン大学(独)、マックスプランク研究所(独)、国立蛋白質研究所(仏)への海外研究留学実績があります。是非、挑戦して下さい。

教室の同門の進路

大学皮膚科教授(千葉大学、大阪大学寄付講座、獨協医科大学埼玉医療センター)、基幹病院、民間病院、開業など多彩です。どこへ行っても大切な仲間です。過去の事例にとらわれず、キャリアを形成していって欲しいですし、出来る限り支援します。

(文責:波多野)

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