研究室配属 Research Training

 ◆2019年の研究室配属


NEWS! 6月27日の発表会で3人が優秀賞を受賞しました! 詳しくは
今年度より、新カリキュラムで研究室配属が4月から始まりました。今年は、安東優里さん、太田和貴くん、小池剛くんの3名の配属学生が研究に取り組みます。安東さんは長崎大学グローバルヘルス研究科の北潔教授の下で研究します。ファイト! ヽ(‘ ∇‘ )ノ
配属学生 氏名 研究テーマ コメント

 1641007 安東 優里
● 多剤耐性結核菌治療薬ベダギリンの作用機序の解析
  指導教員:北潔教授(長崎大学)、小林

 結核は、世界三大感染症の1つであり、近年、一般的な治療で用いられる抗生物質に薬剤耐性を獲得した多剤耐性菌が問題となっている。ベダギリンは2012年に米国で承認された新規の多剤耐性結核菌治療薬であり、ATP合成酵素活性阻害剤として知られるが、その詳細なメカニズムは不明である。ベダギリンによるATP合成酵素の活性阻害としてミトコンドリアの複合体Xの阻害が知られている。そこで、今回、複合体Xの阻害が主な殺菌作用なのか証明するために、トリパノソーマ原虫特有のATP代謝回路であるAcetate succinate CoA Transferase/Succinyl-CoA Synthase (ASCT/SCS) 回路を人工的に組込んだMycobacterium smegmatis(結核菌と同属菌)を作製し、ベダキリンの増殖阻害効果を観察する。
【感想】この研究室配属でとても充実した三ヶ月を過ごすことができました。研究に興味があり、配属期間前から講座で手技を教えてもらっていましたが、実際に自分でテーマを持って研究を始めてみると使う試薬や研究の手順を自分で調べたり、思った通りの結果が出ず試行錯誤したり大変なことが多くありました。私が不自由なく手技を学べたのも先生方が準備してくださっていたからだと思うと感謝の気持ちでいっぱいです。スライド作りも先生方のアドバイスがなければ形にならなかったと思います。この三ヶ月間、新しい環境で色んな人に刺激をもらいながら研究に打ち込めたことは私にとって大きな財産となりました。受け入れてくださった長崎大学の先生方や長い間ご指導してくださった感染予防医学講座の先生方には本当にお世話になりました。ありがとうございました。

 1541014 太田 和貴
● 樹状細胞のTRAF6シグナルは、トキソプラズマ感染早期のコントロールに重要である
  指導教員:飛彈野、小林

 トキソプラズマ原虫は、HIV感染時や免疫抑制剤投与下にある免疫不全患者にトキソプラズマ脳炎を引き起こす。TRAF6は、Toll用受容体やCD40の下流でシグナルを共有するアダプター分子で、NF-κBやMAPキナーゼの活性化に重要である。これまで、自然免疫系細胞へのトキソプラズマ感染において、TRAF6は、IL-12産生やオートファジーを介したトキソプラズマの排除に関与することが明らかになっているが、感染制御機構の詳細は明らかでない。そこで本研究では、トキソプラズマ感染におけるTRAF6の生理的な機能について、樹状細胞特異的TRAF6欠損マウス (CD11c-Cre TRAF6f/fマウス)を用いて解析する。
技術:遺伝子発現解析(RT-PCR、real time PCR)マウス感染実験、細胞培養実験、ELISA法、病理学的解析、免疫染色
【一言】絶対に結果を出します!
【教授コメント】 期待しています。
【感想】3ヶ月間と聞きはじめは長いかなと感じていましたが, いざ研究を始めると, あっという間に終わってしまった研究室配属でした. 実験は1週間では準備すら終わらず, 出したいデータにたどり着くまでにすごく多くの時間を要することがわかり, 医学論文1本出すのに4年近くかかるという事実を, 身をもって知りました. もう毎日朝から深夜まで実験できないことは強く心残りですが, 先生がたの仕事のやりかた, 考え方, 話し方, 資料の作り方, プレゼン力, 文章を書く力は自分にとってとても刺激的で, 研究を続けることの辛さ, 難しさ, 楽しさを教えていただきました. 常に指導していただきながら, 実験に合わせてスケジュールを組み, 実験の待ち時間の間にご飯を食べたり部活に行ったり休憩したり, 合間に自分で実験のプロトコールを工夫し, 実験結果の解析や発表のプレゼン資料を試行錯誤して考えているときは, いままでの人生のなかで最も充実した時間でした. 優秀賞受賞も含め, 貴重な経験をさせていただきました. ありがとうございました. 。

  1641038 小池 剛

●炎症性腸疾患モデルマウスを用いたSLPIの機能解析
  指導教員:小坂、小林

 潰瘍性大腸炎、クローン病をはじめとする炎症性腸疾患(IBD)は腸管に慢性炎症を起こす再発性・難治性疾患である。IBDの病態には不明な点が多いが、腸管粘膜免疫の破綻がIBDの病態に深く関与していることが明らかになっている。Secretory Leukocyte Proteinase Inhibitor (SLPI)は、肺、涙腺、皮膚等で分泌される低分子タンパクであるが、好中球が産生するプロテアーゼを阻害し、組織損傷に対して保護作用を示すと考えられている。しかしこれまで腸管におけるSLPIの機能を詳細に解析した報告はない。そこで本研究ではSLPI欠損マウスと野生型マウスにデキストラン硫酸(DSS)を経口投与して腸炎を誘導し、その感受性の差異を評価することで腸管におけるSLPIの機能を明らかにする。 
技術:遺伝子組換え実験、動物実験、マウス腸炎モデル、病理学的解析、免疫染色、real time PCR

【感想】先行配属も含めて研究室配属の期間は充実した日々を過ごすことができました. 先生に直接教えていただき, 自分の手で実験をする経験はとても有意義なものでした. 特にはじめは失敗も多く,うまくいかないことも多々ありました. しかし繰り返すうちに一人でできることも増え, 自分で実験を進めている実感が湧いてきました. 研究テーマも途中で変更となり, また新しく背景知識から学びなおすことになりましたが, 多くのことを学ぶ良い機会となったと思います. 口演発表においても, 夜遅くまで先生に発表スライドの改良に付き合っていただき, 同じ講座の太田くん, 安東さんと練習しました. その結果, 優秀賞を獲得することができ, 大変嬉しく思います. 研究室配属にあたりご指導賜った小坂先生, 小林教授をはじめ感染予防医学講座の先生方, 消化器内科学講座の工藤さん, 伊藤さん, お世話になった全ての方に心より感謝申し上げます. 本当にありがとうございました.