教授
田仲 和宏TANAKA Kazuhiro
- *** 専門分野 ***
- 染色体転座・融合遺伝子
- DNA修復
研究紹介「染色体転座・融合遺伝子による発がんメカニズムの解明」
「がん」は様々な遺伝子の異常によって発生しますが、筋肉や骨などに発生する悪性腫瘍「肉腫」では、特異的な染色体の相互転座とその結果生じる融合遺伝子が発がん原因と考えられています。肉腫以外にも、白血病などの造血器腫瘍や肺がんなど様々な臓器のがんでも、同様の機構により発生する場合があります。そこで、染色体転座陽性のがんの代表である肉腫を題材として、染色体転座と融合遺伝子形成による発がんメカニズムの解明を目指しています。
これまでに、代表的な肉腫である「ユーイング肉腫」において、染色体転座t(11:22)の結果生じるEWSR1-Fli1融合遺伝子産物により、細胞周期のG1期チェックポイント機構が破綻することが発がん原因の一つであり、それに関わる因子が分子標的治療のターゲットになり得ることを報告してきました。また、非翻訳短鎖RNAであるmicroRNAのいくつかは、EWS-Fli1の下流で発現変化を受けユーイング肉腫の増殖や転移に関わっており、それらの発現を正常に戻すことで腫瘍の悪性形質を抑制できる可能性があることも明らかにしました。
さらに、そもそも染色体転座と融合遺伝子が何故発生するのか、肉腫発がんの根本的メカニズムについても検討を行っています。染色体転座が生じるにはDNAが2箇所で切断される必要がありますが、その際DNA二本鎖切断修復機構が正常に作動すれば染色体転座は起こらないはずであり、何らかの修復機構の異常が関与していると考えられます。DNA二本鎖切断修復機構には、相同組換えと非相同末端結合という2つの主要システムがあることが知られていますが、転座陽性腫瘍におけるこれらの修復機構の異常についても解析を進めています。
また、全国の専門施設と共同で日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)骨軟部腫瘍グループおよび日本ユーイング肉腫研究グループ(JESS)を組織し臨床試験を実施することで、肉腫に対する新たな標準治療の確立、治療成績の向上にも取り組んでいます。さらに、臨床試験や日常診療での手術や生検で得られた腫瘍組織を用いて遺伝子発現解析やゲノム解析などを行うことで、診断や治療に役立つ新たな分子「バイオマーカー」の開発にも取り組んでいます。
プロフィール
- 平成元年 九州大学医学部卒
- 医学博士(九州大学)
主要業績等
専門医等
- 日本整形外科学会 専門医・指導医
- 日本整形外科学会 認定骨軟部腫瘍医
- 日本がん治療認定機構 がん治療認定医
- 日本整形外科学会 認定脊椎脊髄病医
- 日本整形外科学会 認定運動器リハビリテーション医
- 日本リハビリテーション医学会 リハビリテーション専門医・指導医
- 日本リハビリテーション医学会 認定臨床医
所属学会等
- 日本医療研究開発機構AMED 主任研究者
- 日本整形外科学会 (軟部肉腫診療ガイドライン策定委員)
- 日本サルコーマ治療研究学会 (理事・保険診療委員会委員長)
- 日本癌治療学会 (代議員、教育委員会委員、選挙管理委員会委員)
- 日本小児がん研究グループ (JCCG) (理事)
- Japan Ewing Sarcoma Study Group (JESS) (グループ代表者)
- Japan Clinical Oncology Group (JCOG) (骨軟部腫瘍グループ事務局)
- 日本骨軟部肉腫治療研究会 (JMOG) (幹事)
- 西日本骨軟部腫瘍懇話会 (代表世話人)
- 日本結合組織学会 (評議員)
- 西日本整形・災害外科学会 (編集委員)
- 日本癌学会
- 日本臨床腫瘍学会
- 日本小児血液・がん学会
- 日本リウマチ学会
- 日本リハビリテーション医学会
- American Academy of Orthopaedic Surgeons
- American Orthopaedic Research Society
NEWS
- 2024.6.20(木)講義「ゲノム再生医療学」
- 先進医療科学科講義「ゲノム再生医療学」で大阪大学 妻木範行教授にご講義頂きました。詳細
- 2024 American Society of Clinical Oncology (ASCO) Annual Meeting
- 演題 「Final results of a randomized phase II/III study comparing perioperative adriamycin plus ifosfamide and gemcitabine plus docetaxel for high-grade soft tissue sarcomas: Japan Clinical Oncology Group study JCOG1306.」がOral Abstract Sessionに採択されました。詳細
- 2024.3.25(月)がん患者のトータルケアセミナー
- 「がんロコモと疼痛対策の重要性:がん診療医師に知って欲しいポイント」の講演をしました。詳細
- 2024.3.10(日)令和5年度AMED革新的がん医療実用化研究事業研究交流会
- 「基礎と臨床の連携事例」の講演をしました。詳細
- 2024.2.17(土)第13回埼玉骨軟部腫瘍研究会学術講演会
- 「骨軟部腫瘍に対する治療開発:多施設共同研究グループの取り組みと将来展望」の講演をしました。詳細
- 2024.1.27(土)第38回札幌冬季がんセミナー いまがんを考える2024~領域横断的な次世代のがん研究・がん診療~
- 「軟部肉腫に対する周術期治療」の講演をしました。詳細
- 2023.12.1(土)第2回がん・生殖医療フォーラム大分
- パネルディスカッション「がん生殖医療の課題と展望」に登壇しました。詳細
- 2023.10.29(日)高悪性度軟部肉腫へのAI療法 vs GD療法
- 10月29日、生命健康科学コース長 田仲和宏教授の動画が「m3.com」に掲載されました。詳細
- 2023.8.18(金)多様な病態の骨軟部腫瘍
- 7月29日、生命健康科学コース長 田仲和宏教授の記事が読売新聞に掲載されました。詳細