第11号 H 14.10/1

教授に就任して

生体分子構造機能制御講座(内科第1)教授  
吉 松 博 信

地域医療連携室

 7月1日より大分医科大学医学部、生体分子構造機能制御講座、内科第1を坂田利家名誉教授の後任として担当させていただくことになりました。私どもの内科は初代教授の高木良三郎前大分医科大学学長の頃から糖尿病と代謝疾患、内分泌疾患、循環器疾患、肝および消化器疾患、膠原病、腎・高血圧、内科領域の遺伝病、心身症といった疾患を取り扱ってまいりました。そのなかでも、糖尿病、肥満症、高脂血症、高血圧、虚血性心臓病などの疾患は生活習慣病と呼ばれ、患者さんの数が飛躍的に増加し、社会的にも問題となっている疾患群です。生活習慣の乱れから進展してくる病気ですから、その治療にあたっては患者さん自身による生活習慣の改善が必要であることは言うまでもありません。この際、問題となる患者さんの生活習慣を、医者が教育することによって是正するのは困難です。病気に関する知識が豊富になっても、食生活などを変えるという実践をともなわないことが多いからです。つまり“医療側の管理”に“患者さんが従う”という治療図式には限界があります。この図式で治療が進められる限り、両者の努力の割には治療効果は上がりません。むしろ、患者さんの食行動やライフスタイルにどのような悪循環が存在するか、この点を患者さんが気付くように治療を設定し、患者さんが自分自身でその修復を図るというようなアプローチが必要になります。すなわち“患者さんの自己管理”を“医療側が助成する”という考え方です。私どもはこのような考え方で生活習慣病の診療にあたってきましたが、まだまだ足りないことばかりです。第一に、我々は大学病院で患者さんが来られるのを待っているわけです。これといった症状が表に出にくい生活習慣病の患者さんは病院を受診されない方も多く、その意味では我々はごく一部の患者さんを相手にしているにすぎません。したがって、これからは予防医学的アプローチや地域医療といった課題がさらにその重要性を増してくると考えております。幸い私どもの教室では大分県の荻町や別府市の協力のもとに、それぞれ7年間と4年間、地域住民の健康増進に関わる事業にたずさわってきました。これらは若い医師諸君の教育にもなっており、他の地域にも広める形で今後も続けていきたいと考えております。現在、大分医科大学および私どもの教室も多くの課題を抱えています。そのような中で教室員一同、よりよい医療者であるための努力をしております。何卒、皆様方のより一層の御支援、御協力を賜りますようお願い申し上げます。