第11号 H 14.10/1

Q&Aコーナー

Q:ペット病について教えて下さい

A:動物を介して人に感染する病気のことを「人獣(あるいは人畜)共通感染症」といいます。県内の開業動物病院での最近の経験例は、ジアルジア症とノミアレルギーです。前者は原虫による人及び犬の下痢が主症状で、外国の流行地への旅行者を除いて、飼い犬から人への感染例は報告がありません。後者はノミの吸血時の唾液による人及び犬猫のアレルギー反応で、家庭内で飼っている犬猫のノミ駆除薬で解決できる場合があります。
 そのほか、身近な動物からの病気を紹介します。

 

ぜんそく・アナフィラキシーショック
 ハムスターやネズミ類の毛が原因のアレルギーです。かなり危険な場合もありますので、注意が必要です。
 ところで、ペットショップで見かけるハムスターは外国から輸入されていることをご存じでしょうか。2001年に関西空港に輸入されたハムスターは46万6011匹で、オランダとチェコからの輸入が全体の98.7%を占めているそうです。

 

ネコひっかき病
 笑ってしまうような病名です。ネコに引っかかれたり、咬まれたり、あるいは濃厚に接触したりすることによって感染します。数日から数週間後に受傷部分の皮膚に炎症が起こり、近くのリンパ節が痛みを伴って腫れてきます。重症化することはありません。病原体はバルトネラ・ヘンセレという細菌です。ネコ自身は無症状ですが、日本の飼い猫の約3.3%が保菌しているという報告があります。
 ネコひっかき病より一般的なのは、パスツレラ菌の感染による化膿症状で、こちらは犬の75%、ネコの100%近くが保菌しているといわれています。

 

オウム病
 インコ・オウム・九官鳥の持つクラミジアという病原体により呼吸器症状や肺炎を起こします。ペットショップに子供連れで入って、たまたま店員さんがインコ類の鳥かごの掃除をしているところを30分ほど見学したところ、数日たってインフルエンザ様の症状が出て、いっこうによくならず精密検査でようやく感染がわかったという報告もあります。

 

クリプトコッカス症
 鳩の糞を栄養に増殖するカビにより起こる肺炎です。免疫機能が低下している入院患者さんのいる病室のベランダに住みついている鳩に餌をやる光景は「微生物の色眼鏡」でみるとなかり危ない行為で、東京都内の病院や神社などでは「鳩に餌をやらない運動」を展開していると聞いています。

 

ハムスターからの細菌感染
 子どもが縁日の夜店で買ったハムスターからレプトスピラという細菌に感染したという報道がありました。8日後に発熱と全身のひどい痛みから始まって、呼吸困難や多臓器障害、さらに完全房室ブロックという心臓の異常も現れましたが、緊急処置や抗生物質で回復したとのことです。

 

プレリードッグ
 ペットとして飼っている家庭が見られますが、このプレリードッグはペスト菌に対する感受性が高く、最大の輸出国であるアメリカ合衆国では、ペットとして家で飼おうと考える人は誰もいません。

 

ミドリガメ
 水槽内の糞を栄養にサルモネラ菌が増殖して、お母さんがカメの水槽を掃除した手をよく洗わずに調理をしたため、サルモネラ菌による食中毒を起こした例が報告されています。

 

 ここまで読まれて、「動物は恐ろしい病気をたくさん持っているからさわっちゃだめ」と思いこんではいけません。これらの事例は、極めてまれなことでして、まれであるからこそ新聞報道や学会報告になるのです。今までどおりの動物との接触にほんの少しだけ注意(今までよりまめに手を洗うこと。口移しで食べ物をやらないこと。)を払って下さるだけで大丈夫です。老齢者や病院の患者さんに接して「癒し」のお手伝いをするアニマルセラピーで活躍している犬や猫などもいますから、一概に危険視することはありません。
 一方、動物の世界の病気のうち、とくに飼い犬の夏の病気の代表は熱中症でして、命を落とす犬も多いようです。散歩の時に暑いアスファルトの歩道を歩いて足のうらを火傷することもあります。また、犬のアトピー性皮膚炎や糖尿病とその合併症、寿命が延びたことによる白内障や痴呆など、人と同様の病気が動物の世界でも多くなりました。洋猫の膀胱結石も目立っているようです。

 

ペットロス症候群
 家族の一員であるペットを亡くし、がっかりしてブルーな日々が続くようでしたら、心身症内科を受診して下さい。

 

アルファ症候群・権勢症候群
 飼い犬のしつけに失敗し、犬が一家の「ボス」になって、子どもにかみついたり大人を威嚇する場合は、犬のしつけ教室や訓練所などで矯正をしてもらいましょう。

 

 

 犬の世界では、ボスが最初に食事をすることになっています。お父さんが夜遅く帰って、お母さんに怒られながら冷たい食事をする家庭では、犬から見ればお父さんの順位が一番下ということになってしまいますね。

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(文責 万年 和明)