[発行] 大分医科大学医学部附属病院広報誌発行委員会

治療最前線

〈麻酔科〉

 当科は、主としてさまざまな痛みの治療を行う診療部門です。急性期の痛みも対象としていますが、特に慢性期の痛みを治療の対象としています。具体的な対象疾患は、帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、脊椎疾患(椎間板ヘルニア、変形性脊椎症等)による腰痛や四肢の痛み、末梢神経損傷後の難治性疼痛、脳卒中や脊髄損傷などの中枢神経障害後の手足の痛み、末梢血行障害による四肢痛、片頭痛や緊張性頭痛などの機能性頭痛、癌性疼痛などです。痛みを有する疾患以外にも、顔面神経麻痺、眼瞼・顔面けいれん、突発性難聴、網膜血管閉塞症、特発性手掌多汗症などの機能性疾患も治療対象としています。
 治療法として用いているのは主に神経ブロックです。外来での星状神経節ブロックや硬膜外ブロックをはじめとして、透視下での胸部・腰部交感神経節ブロック、腹腔神経叢・上下腹神経叢ブロック、神経根ブロック、椎間関節ブロック、三叉神経ブロック(上顎、下顎神経、ガッセル神経節)など、透視下ブロックは年間200例近くをこなしております。
 神経ブロック以外の治療法として、手掌多汗症に対しての胸腔鏡下交感神経遮断術はこれまで200例以上に施行しており、98%以上の患者さんで発汗低下の効果を挙げております。
 さらに一昨年より、腰椎手術をしても痛みやしびれが残った患者さんに対して、他施設に先駆けて細径内視鏡を用いた硬膜外鏡下硬膜外腔形成術を行っております。これは0.9mmの極細の内視鏡を用いて、脊椎に囲まれた硬膜外腔という幅が2-3mmの非常にせまい場所をビデオカメラで見ながら、手術によってできた癒着をはがす手技です。癒着のため硬膜外腔が失われて薬剤がゆきわたらない状態から、再び硬膜外腔の広さを元に戻して、薬剤がゆきわたるようにします。これまで約30例の患者さんに行い、8割の患者さんで痛みやしびれが半減しております。    

(文責 麻酔科 池辺 晴美)

透視下ブロック(腹腔神経叢ブロック)


硬膜外鏡下硬膜外腔形成術

最終更新日時: 大分医科大学総務部庶務課文書係作成