[発行] 大分医科大学医学部附属病院広報誌発行委員会

感染制御部紹介

不眠症 くすり


 
 現代社会では、ストレスや不安、生活環境の変化などが原因で不眠に悩んでいる方が増加しています。そこで今回は、不眠症とくすりについてお話しします。
 100年以上前に見出され、かつて主に使用されていたバルビツール酸系とよばれる睡眠薬は、脳のほぼ全域を抑制するため、呼吸抑制などの重篤な副作用があります。このため、睡眠薬に対しては、今でも「飲み続けるとやめられなくなるのではないか」、「ぼけてしまうのではないか」等のマイナスイメージが持たれています。しかし近年、睡眠薬としてはベンゾジアゼピン系と呼ばれる薬剤が主に使用されています。このベンゾジアゼピン系の薬剤は、バルビツール酸系の睡眠薬とは異なり、大脳辺縁系という脳の一部位を選択的に抑制することによって、興奮、不安を除き、睡眠を誘導します。このため、現在の睡眠薬は、これまでのイメージとは異なり、重篤な副作用が少なく、比較的安全なくすりであるといえます。
 ところで実際の不眠に対して、どのようにくすりが選択されるのでしょうか?
 ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、くすりの種類によって作用時間・特性が異なり、超短時間作用型・短時間作用型・中間作用型・長時間作用型などに分けられます。一方、不眠は、@入眠困難(床についてもなかなか眠りにつけない)A中途覚醒(夜中に何度も目が覚め、その後眠れない)B早朝覚醒(普段より早く目が覚め、その後眠れない)C熟眠障害(眠りが浅くて、熟眠感がない)の4つに分類されます。そこで、@に対しては、一過性の入眠障害に効果を持つ超短時間や短時間作用型のくすりが、またA、B、Cに対しては、効果持続時間の長い中間作用型や長時間作用型のくすりが処方されます。
 このように、睡眠薬は病態に合わせて処方されるため、決められたとおりに服用することが重要となります。特に高齢者においては、消化管・肝臓・腎臓などの機能が低下するため、吸収・代謝・排泄などが遅延し、睡眠薬の効果発現が遅れたり、効果や副作用が強く現れたりすることがあるので、服薬に際しては一層の注意が必要となります。また、以前にお酒とくすりの話をしましたが、アルコールと併用すると、互いの作用を増強し合うこともあるため併用は避けるべきです。
 睡眠薬は中止する際にも十分な注意が必要となります。急に服用を中止すると、神経が過敏になったり、不安・幻覚等の症状が現れたりすることがあります。また、短時間作用型の服用により「反跳性不眠」といって、服用前よりも眠れなくなるという症状が現れることもあります。これらの理由から、睡眠薬を中止する際には、徐々に減量したり、服用間隔を1日おき、次に2日おきというように広げていくなどの工夫が必要となります。睡眠薬の服用・中止に関しては、医師・薬剤師に必ず相談するようにしましょう。

(文責 薬剤部 遠原 大地)

最終更新日時: 大分医科大学総務部庶務課文書係作成