
ピロリ菌と胃炎、潰瘍、胃がん
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は胃粘膜の表面や細胞の間に感染している細菌です。自らウレアーゼという酵素を産生して、胃の中の尿素を分解しアンモニアをつくり、強い胃酸から身を守って持続感染しています。ピロリ菌がいったん感染すると、抗菌薬で除菌されない限り、一生涯感染しつづけています。そして、胃粘膜に強い炎症が起こり、ひどくなると潰瘍もできてきます。日本人のピロリ菌感染率は、40
歳以上では70-80%ですが、それより若い世代では感染率は低下しています。
現在、胃潰瘍患者の80%以上、十二指腸潰瘍患者の90%以上はピロリ菌が感染しているとされており、除菌治療により、潰瘍の再発がほとんど起こらなくなることがわかっています。潰瘍のある患者さんのピロリ菌の診断や治療は、健康保険に適用されており、正しく診断され治療がおこなわれますと、80-90%の人がピロリ菌除菌に成功します。
最近、胃がんは、そのほとんどがピロリ菌陽性者から発生するという報告が我が国からだされました。ただ、ピロリ菌感染が胃がんの原因のすべてではありません。遺伝や食事、ストレス、タバコ、塩分摂取などさまざまな要因がからみ合って発生するとされており、ピロリ菌はその中の重要な因子のひとつとなっています。
本院の内科第2と総合診療部では、ピロリ菌の診断と治療について、たくさんの患者さんを診療しています。今回、那須、藤岡両教授は、ピロリ菌感染症の研究に対して、日本化学療法学会より、「志賀 潔・秦 佐八郎記念賞」という非常に名誉ある賞もいただきました。これも、ご協力いただいた患者さんのおかげと感謝いたしております。今後も、ピロリ菌や胃の調子が気になる方は是非、お気軽に受診されて下さい。
(文責 内科第2 村上 和成)

ピロリ菌の電子顕微鏡写真
|