[発行] 大分大学医学部附属病院広報誌発行委員会

陳旧性顔面神経麻痺に対する
遊離薄筋弁移植術

 

 額にしわを寄せられない、目が閉じられなくなる、口がうまく動かせなくて表情が作れないなどといった症状は、顔面神経麻痺の特徴的症状です。顔面神経麻痺は通常片側におきるので、表情がおかしくなる(顔面表情筋の麻痺症状)のも、顔の片側であることが多いです。
 このような顔面神経麻痺をおこす原因は様々で、急性期の顔面神経麻痺に対する治療も様々あります。治療が奏功して表情筋の機能が元通りになることもあれば、しばしば後遺症として顔面神経麻痺が残ることもあります。このような状態を陳旧性顔面神経麻痺と呼びます。
 陳旧性顔面神経麻痺の治療の一つとして、動かなくなった表情筋のかわりに別の場所から顔面に筋肉を移植して、表情を作る機能を再建する遊離筋弁移植術という手術法があります。本院では薄筋という太ももの筋肉を使った表情の再建手術をおこなっています。
 この治療法は2回の全身麻酔での手術が必要となります。1回目に神経移植をおこない、麻痺していない側の健康な神経線維を麻痺側に導きます。半年後2回目の手術で、薄筋移植を行います。それぞれ手術後1〜2週間の入院が必要となり、それ以外は月1回外来で経過観察します。通常筋肉移植から半年で、移植した筋肉の動きがみられるようになり、表情が作れるようになります。
 本治療では全体で約1年間の治療期間を必要としますが、麻痺していない側の動きと連動した表情を作ることができ、今現在ある陳旧性顔面神経麻痺の動的な再建方法の中ではもっとも良い結果をえることが出来ると言われています。
 本治療を希望される方、それ以外に陳旧性の顔面神経麻痺による顔面の変形を改善したい方は遠慮なく形成外科外来を受診してください。外来日は月曜日と水曜日の午前中です。電話による問い合わせは、平日14時以降に形成外科外来(097−586−6881)までお願いいたします。

(文責 形成外科 清水 史明)

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最終更新日時: 大分大学医学・病院事務部管理課作成