2012年に大分大学に赴任し2013年に教授を拝命し、診療の立て直しにはじまり、教育と研究に邁進してきました。私が大分大学に赴任後の大学院生3名のうち1名が2018年末に学位を取得しました。急速に発展するがん治療を正しく理解し診療に適正に応用するためには研究力が必要と考えており、それが教室全体に浸透してきたことはうれしい限りです。
近年、肺がん治療において免疫治療(免疫チェックポイント阻害剤)が、大きな地位を占めるようになり、ドライバー遺伝子陰性の進行肺がんでは第一選択の治療となりました。
その免疫チェックポイント阻害剤の基本であるPD-1の発見(1992年)により、本庶佑先生が2018年のノーベル医学生理学賞を受章されました。「がん免疫療法」に道を開き、「人類のがんとの闘いにおける記念碑」と高く評価されたわけです。治療の有効な選択肢が増えることは喜ばしい限りですが、まだまだがんとの戦いは続きます。
そのようななか、難治がんと1年以上戦ってきた亀井美玲先生が、2019年3月3日にその短い命を閉じたことは断腸の思いです。乳腺専門医として大分大学と大分県の乳がん医療を担い、最期まで医師を全うされました。ご冥福をお祈り申し上げます。
大学の使命は、診療・教育・研究をバランスよく推進することです。本院の理念である「患者本位の最良の医療」すなわち質の高い最新の医療そして安全な医療を提供することに加え、このような医療が実践できる倫理観豊かな医療人の育成に努めてゆきます。そして、大分の医療、日本・世界の医療に貢献してゆきたいと思っています。
今後とも、一層のご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
呼吸器・乳腺外科学講座
教授 杉尾賢二
大分大学医学部総合外科学第二講座(旧)は1979年4月に調 亟治先生を初代教授として開講し、1981年10月の大分医科大学附属病院開院時に、心臓血管外科、呼吸器外科、消化器外科を主体として診療を開始しました。1995年に心臓血管外科が診療科として独立し(初代教授:葉玉哲生先生)、総合外科学第二講座は、呼吸器外科と消化器外科(食道外科)主体となりました。2013年4月に、外科・内科ともに臓器再編による講座再編成が行われ、呼吸器・乳腺外科学講座となり、呼吸器外科と乳腺外科に特化した診療科を担当することになりました。
呼吸器・乳腺外科学講座は、外科学講座(消化器・小児外科、心臓血管外科)と連携して外科医の育成(外科専門医)をおこない、さらに、呼吸器外科専門医、乳腺専門医を育成してゆきます。また、大分県内の主要施設や全国のがんセンターとも連携し、ハイレベルな研修ができるようにしてゆきます。
研究面では、癌の発生原因や発育・進展に関与する遺伝子の解析を推進し、臨床に応用できるトランスレーショナルリサーチに取り組みます。
診療面では、呼吸器外科・乳腺外科の診療を主体とし、エビデンスに基づく医療を提供するとともに、遺伝子診断にもとづく高度な治療を提供できるように努力しています。そして、本院の理念である「患者本位の最良の医療」を実施するべく、手術を含めた最良・最新の医療を提供していきます。