教授に就任して
生体分子構造機能制御講座(産科婦人科学)教授
産科婦人科長 楢 原 久 司
4月1日より大分大学医学部附属病院の産科婦人科を宮川勇生名誉教授の後任として担当させていただくことになりました。
産婦人科医は、女性の一生(ライフサイクル)と深く関わっていく使命があります。思春期、性成熟期、妊娠・出産、閉経前後、老年期に起こる様々な病気や心の変化と向き合っていくことが私たちの務めです。
思春期には、無月経や月経困難(生理痛)などが生じ、放置しておくと将来的に不妊症や子宮内膜症を引き起こすことがあります。診察に当たっては(思春期の)女性の気持ちに特に配慮しています。また、少子化を防ぐ意味でも不妊症が重要な課題となっております。私たちは、一般的な不妊症の治療のみならず、体外受精・胚移植などの高度生殖医療にも力を入れています。
妊娠・出産は、新たな生命を迎え、誕生の喜びに満ちたものです。私は、これまで、胎児と母体とのコミュニケーションに興味を持ち、受精・着床や分娩発来の仕組み・早産の予防などについて研究してきました。産科診療においても、この視点を生かしていきたいと思っております。妊婦さんに合併症がある場合でも、関係各科と連携し、最も良い状態で出産できるよう、スタッフが一丸となって努力いたします。
卵巣腫瘍、子宮外妊娠などには、美容に優れ、術後の負担も少ない腹腔鏡下手術を数多く行っています。閉経前後の更年期症状は、女性専用外来と連携して治療に当たっています。精神的・肉体的な悩みや骨粗鬆症の予防など生活の質(QOL)の向上に努めています。腫瘍性の病気においても、適切な診断・治療法を取り入れ、手術療法や化学・放射線療法を行っています。QOLにも十分配慮し、心身の負担になり過ぎないような診療を心がけています。
大学病院は医育機関でもあり、臨床医と研究者の眼をもった産婦人科医を育てて行きたいと思っております。産婦人科領域にも未解決で難治性の疾患が数多くあります。難治性疾患を適切に治療していくには、臨床医と研究者の視点が大切です。受診される患者さんを一人ひとり丁寧に診療して、新たな課題や新しい知見を見い出し、根気強く努力を積み重ねる産婦人科医を育てたいと考えております。
今後も、医学的根拠に基づいた説明と同意を重視し、大分県を中心とした産婦人科医療の充実に取り組んでいく所存です。皆様のご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
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