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お知らせ詳細

 

平成24年度第4回大分大学全学研究推進機構セミナー
(兼第21回遺伝子診療ボーダレスカンファレンス・大学院セミナー)

開催日時:平成25年2月18日(月)18:00-19:30
開催場所:卒後臨床研修センター セミナー室
講  師:松本 直通 先生
所  属 横浜市立大学医学研究科 教授 演  題 遺伝性疾患解析の最前線

◆遺伝性疾患解析の最前線◆

本年度第4回全学研究推進機構セミナーを遺伝子診療ボーダレスカンファレンス及び大学院セミナーを兼ねて行いました。講師に横浜市立大学医学研究科教授、松本直通先生をお招きし、「遺伝性疾患解析の最前線」と題してセミナーをしていただきました。2003年にヒトゲノムシーケンスが完了し、以降様々な技術革新が起こり、世界中の研究者がヒト疾患の遺伝素因を明らかにしようと精力的に研究を行っています。ヒト疾患は少なくとも7,000種類はあるといわれていますが、これまでに遺伝的原因(責任遺伝子とその変異)が明らかにされた疾患は半数程度です。松本先生は産婦人科医を経験された後、遺伝医学分野の第一人者であった、長崎大学の新川詔夫先生のもとで大学院生として遺伝学研究をスタートされています。

大学院卒業後、シカゴ大学に留学され、帰国後、長崎大学の新川先生の教室の助教授を経て、平成15年に横浜市立大学医学部の教授に就任されました。その後、現在まで、さまざまな遺伝性疾患の原因遺伝子の解明に精力的に取り組んでおられます。特に2009年からは次世代シークエンサー(NGS)を用い、先端的ゲノム解析手法を駆使し、解析を行われています。現在、研究室には6台のNGSを保有されておられるとのことで、日本における疾患遺伝子研究の拠点になっています。セミナーの前半ではゲノム医学の基礎について、単一遺伝子病の疾患ゲノム解析の重要性や次世代シークエンスの原理について話していただきました。後半では最近のデータの中から、原因遺伝子の同定やその機能や症状との関連について、Coffin-Siris 症候群やPorencephaly(孔脳症)をとりあげていただきました。Coffin-Siris 症候群は精神遅滞を主症状とする優性遺伝形式をとる稀な疾患ですが、先生のグループは原因遺伝子としてSWI/SNF複合体を形成するサブユニット遺伝子の変異を同定されました。このSWI/SNF複合体はクロマチン再編成や遺伝子発現に関与するとのことです。この結果はNat Genet 2012に掲載されています。また、私の希望でPorencephaly(孔脳症)について話していただきました。この疾患は松本先生自身も産婦人科医の時、経験されたとのことですが、脳に空洞を生じる疾患です。最近、IV型コラーゲンa1鎖遺伝子の変異で起きること明かになりましたが、松本先生らのグループは遺伝子欠損マウスのデータをもとにヒトのa2鎖遺伝子でも起きることを見出されました。脳血管の基底膜の脆弱性のため、分娩時に頭蓋骨にかかる圧力によって、血管が破たんするためと思われます。その他、セミナーでは一回のNGSのランニングコストが科研費(C)の一回採択金額に匹敵することやパーソナルゲノム解析に関する話題等、面白く話していただきました。セミナーの最後には、このような比較的稀な疾患の分子メカニズムの解析を通じ、その成果を共通の症状を呈する疾患の分子標的薬剤の開発につなげていきたいと述べられ、セミナーを締めくくられました。
セミナーは臨床研修センターセミナー室で行いましたが、受講者の大学院生の他、内科、小児科、産婦人科、皮膚科等の疾患遺伝子の解析をされている先生方が大勢聴きにきていただき、会場にはいりきれない程で、質疑応答も非常に活発に行われました。
(報告者:吉岡秀克)

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